片頭痛とアロディニアについて
片頭痛は「頭痛が来る」ことを繰り返す代表的な一次性頭痛であり、特に日常生活に大きな支障を及ぼす病気です。片頭痛の患者さんの中には、発作が進むにつれて**アロディニア(異痛症)**と呼ばれる状態が出現することがあります。アロディニアとは、本来痛みを感じない軽い刺激(髪を梳かす、眼鏡をかける、顔を洗うなど)で痛みを強く感じてしまう現象で、片頭痛の慢性化や重症化と密接に関係しています。「頭痛が来る」だけでなく、些細な刺激までも痛みに変わるため、生活の質を大きく損ねるのが特徴です。
原因
片頭痛の原因は脳の神経血管系の過敏性にあると考えられています。セロトニンやグルタミン酸などの神経伝達物質に加え、**CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)**が頭痛発作の中心的役割を果たすことが明らかになっています。CGRPは脳血管を拡張し、痛みを増幅させ、炎症を誘発します。
アロディニアの出現には、末梢だけでなく中枢の感作(痛みを処理する神経の過敏化)が深く関わります。繰り返し「頭痛が来る」ことで痛みの回路が過敏になり、本来なら痛くない刺激まで痛みとして認識してしまうのです。これにより片頭痛が慢性化するリスクが高まります。
症状
片頭痛では典型的に片側性の拍動性頭痛が数時間から数日間続き、吐き気や光過敏、音過敏を伴います。患者さんは「また頭痛が来るのではないか」と常に不安を抱えることも少なくありません。
アロディニアが加わると、
髪を触ると頭皮が痛い
顔を洗うだけで痛む
メガネやイヤホンを装着するだけで違和感や痛みが強い
といった症状が現れます。つまり「頭痛が来る」だけでなく、日常生活のごく軽い刺激すら耐え難い痛みに変わるのが大きな特徴です。
治療
片頭痛とアロディニアの治療は大きく分けて発作時治療と予防治療があります。
発作時治療
トリプタン製剤(スマトリプタンなど)が中心で、早期に服用することで「頭痛が来る」流れを抑えます。
NSAIDs(ロキソプロフェンなど)も有効ですが、乱用すると薬物乱用頭痛を引き起こすため注意が必要です。
アロディニアが強く出てしまった段階では、トリプタンの効果が弱まることが知られており、早期内服が極めて重要です。
予防治療
従来は抗てんかん薬(バルプロ酸、トピラマート)、β遮断薬(プロプラノロール)、Ca拮抗薬(ロメリジン)などが用いられてきました。
しかし、これらは副作用や効果の限界があるため、CGRP関連薬の登場が大きな転換点となっています。
治療薬(CGRP製剤について詳しく)
CGRPは片頭痛の発作に直接関わる物質であり、これを標的とするCGRP製剤が新しい予防薬として使われています。現在日本で使用できるのは以下の薬剤です。
エムガルティ(ガルカネズマブ):1か月に1回皮下注射。初回は2本、以降は1本を継続。
アジョビ(フレマネズマブ):1か月ごと、または3か月ごとに皮下注射が選べる。
アイモビーグ(エレヌマブ):1か月に1回の皮下注射。
これらはいずれもCGRPやその受容体を阻害することで、発作の頻度や重症度を抑えます。「頭痛が来る」回数が明らかに減り、アロディニアの軽減も報告されています。副作用は注射部位の反応が多く、重篤なものは稀です。従来薬で十分な効果が得られない患者さんにとって画期的な選択肢となっています。
さらに、発作時に使用できる**CGRP受容体拮抗薬(ゲパント系:ウブロゲパントなど)**も海外では登場しており、日本でも今後導入が期待されています。
生活指導
「頭痛が来る」ことを防ぐためには、生活習慣の安定が欠かせません。
睡眠リズムを整える(寝すぎ・寝不足を避ける)
規則正しい食事をとる(空腹を避け、カフェイン過剰を控える)
ストレス管理(過労や精神的ストレスが頭痛の引き金になる)
適度な運動(有酸素運動は予防効果があるとされる)
頭痛ダイアリーをつけ、「頭痛が来る」タイミングや誘因を把握する
これらを徹底することで、CGRP製剤やトリプタンなどの薬物療法の効果をさらに高め、アロディニアの進展を防ぐことができます。
まとめ
片頭痛は「頭痛が来る」ことが繰り返され、生活の質を大きく損なう病気です。さらにアロディニアが出現すると、些細な刺激までも痛みに変わり、慢性化のリスクが高まります。治療には早期の発作時治療、そしてCGRP製剤を中心とした予防治療が重要です。加えて、生活習慣の見直しや頭痛ダイアリーによる自己管理が、「次に頭痛が来る」不安を減らし、患者さんの生活を大きく改善します。
東大阪みき脳神経外科クリニックではMRIを導入しており同日検査、同日結果説明行っております。 また頭痛の頓挫薬、予防薬に関しても処方可能です。お気軽にご相談下さい。