一次性性行為頭痛・一次性咳嗽頭痛・一次性運動性頭痛について
頭痛外来を受診される患者さんの中には、片頭痛や緊張型頭痛といった一般的な頭痛に加え、特殊な誘因で発症する頭痛を訴える方がいます。その代表的なものが一次性性行為頭痛、一次性咳嗽頭痛、一次性運動性頭痛です。これらはいずれも国際頭痛分類(ICHD)で「一次性頭痛」に分類され、脳の器質的異常がないにもかかわらず、特定の動作や状況により誘発される頭痛です。頭痛外来では、重篤な疾患(くも膜下出血や動脈解離など)との鑑別を行った上で診断されることが重要です。
1. 原因と誘発因子
一次性性行為頭痛
性行為やオーガズムに伴い発症する頭痛です。性的興奮に伴う血圧上昇や脳血管の拡張が関与すると考えられています。誘発因子は性行為そのものであり、特にオーガズム直前や直後に急激な頭痛を感じるのが特徴です。一次性咳嗽頭痛
咳、くしゃみ、いきみなど急激な胸腔内圧上昇により頭蓋内圧が上昇し、それが頭痛を誘発するとされています。主な誘発因子は咳嗽、発作的なくしゃみ、排便時のいきみなどです。一次性運動性頭痛
激しい運動や持久的なスポーツ活動によって誘発されます。ランニング、重量挙げ、水泳、サイクリングなどで頭痛が出現しやすく、特に高温環境や脱水が重なると誘発されやすいとされています。
2. 症状
一次性性行為頭痛
頭頂部から後頭部にかけての拍動性頭痛が多く、オーガズムの直前・直後に急激に起こります。数分から数時間で軽快しますが、強い恐怖感を伴い、初発時はくも膜下出血と区別が困難です。一次性咳嗽頭痛
咳をした瞬間に突発的な鋭い頭痛が起こり、数秒から数分でおさまります。頭部全体に広がることが多いですが、後頭部優位に生じることもあります。一次性運動性頭痛
激しい運動中または直後に拍動性頭痛が出現します。頭部全体のズキズキした痛みが特徴で、数分から数時間持続します。
3. 検査と画像診断
頭痛外来ではまず二次性頭痛の除外が最も重要です。特に突然発症する激しい頭痛(サンダークラップ頭痛)は、くも膜下出血や脳動脈瘤破裂などの危険疾患を否定する必要があります。
血液検査:感染や炎症の有無を確認
MRI・MRA:脳腫瘍、動脈瘤、動脈解離、静脈洞血栓症の除外
CT:急性期のくも膜下出血を確認
腰椎穿刺:くも膜下出血や髄膜炎を疑う場合
これらの精査を経て、異常が認められない場合に「一次性」と診断されます。
4. 治療薬
頭痛外来での薬物療法は、症状の頻度や重症度に応じて行います。
急性期治療
一次性性行為頭痛・一次性運動性頭痛では、**NSAIDs(ロキソプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン)**を発作時に使用
激しい頭痛が短時間で終息する場合は、薬を必要としないことも多い
一次性咳嗽頭痛ではNSAIDsに加え、インドメタシンが特に有効とされています
予防療法
発作が反復する場合には、インドメタシンの定期内服が第一選択
β遮断薬(プロプラノロール)、抗けいれん薬(トピラマート)、カルシウム拮抗薬(ベラパミル)などが用いられることもあります
一次性性行為頭痛では、性行為前にインドメタシンやトリプタンを予防的に服用する方法もあります
5. 生活指導
頭痛外来では薬物治療だけでなく、生活習慣の改善指導も重要です。
一次性性行為頭痛:
初回発症後は必ず精査を受け、二次性頭痛を除外する
性行為時は過度な緊張や激しい動きを避け、徐々に負荷をかける
不安が強い場合はパートナーとのコミュニケーションをとり、必要に応じて頭痛外来でカウンセリングを受ける
一次性咳嗽頭痛:
咳やくしゃみの原因となる呼吸器疾患を治療する
排便時のいきみを避けるために食物繊維や水分摂取を増やす
急に力む動作を控える
一次性運動性頭痛:
ウォームアップを十分に行い、急激な運動開始を避ける
脱水や高温環境を避け、こまめに水分補給をする
頭痛が出やすい運動や負荷は段階的に調整する
まとめ
一次性性行為頭痛、一次性咳嗽頭痛、一次性運動性頭痛は、いずれも特定の誘因により発症する一次性頭痛であり、頭痛外来での正確な診断と二次性頭痛の除外が極めて重要です。治療薬としてはインドメタシンが有効とされ、NSAIDsやβ遮断薬、トリプタンなども使用されます。生活習慣の工夫や誘因回避によって再発を予防することも大切です。頭痛外来では薬物治療と並行して、患者さん一人ひとりに応じた生活指導を行うことが治療成功の鍵となります。
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