嗜銀顆粒性認知症とは?
嗜銀顆粒性認知症は、高齢期に発症する認知症の一つで、脳の神経細胞に「嗜銀顆粒」という小さな異常構造物がたまることで起こります。これはタウ蛋白という物質の異常が関係しており、アルツハイマー病と同じ「タウオパチー」に分類されます。
発症は70歳代以降に多く、物忘れや感情の変化、行動の異常などが目立ちます。まだ一般の方にはなじみが薄い病気ですが、実は認知症外来での診断の中に隠れている可能性があります。
主な症状
嗜銀顆粒性認知症の症状は、初期には「年齢のせいかな?」と思う程度の物忘れから始まります。
物忘れ:最近の出来事を思い出せない、同じことを何度も聞く。
実行機能の低下:料理や買い物の手順がわからなくなる。
感情の変化:怒りっぽくなる、気分が落ち込む。
行動の変化:徘徊、無気力、時に反社会的行動。
アルツハイマー型認知症との違いは、行動面や感情面の異常が目立ちやすい点です。MCI(軽度認知障害)の段階で早期に気づければ、進行を遅らせることができます。
認知症外来で行う検査
「物忘れが増えたから」と受診された場合、認知症外来では次のような検査を組み合わせます。
問診・認知機能検査
ご本人やご家族からの聞き取りに加え、MMSEやMoCAなどのテストでMCIか認知症かを確認します。画像検査(MRI、SPECT、PETなど)
海馬や側頭葉の萎縮、脳血流の低下を確認します。嗜銀顆粒性認知症は特に側頭葉や扁桃体に異常が出やすいとされています。血液検査
甲状腺機能低下やビタミン不足など、他の原因による物忘れを除外します。
確定診断は難しいですが、「アルツハイマー型認知症と少し違う経過をたどる」ときには嗜銀顆粒性認知症が疑われます。
鑑別すべき病気
認知症外来では以下の病気との区別が大切です。
アルツハイマー型認知症:もっとも一般的。物忘れが中心。
レビー小体型認知症:幻視や手のふるえ、自律神経症状を伴う。
前頭側頭型認知症:人格変化、社会的行動の障害が目立つ。
正常圧水頭症:歩行障害、尿失禁、認知機能低下の三徴。
これらと区別することで、治療方針が変わってきます。
治療について
残念ながら、嗜銀顆粒性認知症に対する根本的な治療薬はまだありません。ただし、症状に応じて薬やリハビリを組み合わせることで、進行を遅らせたり生活の質を保つことは可能です。
薬物療法
認知症治療薬
アルツハイマー病と同様に、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなどのコリンエステラーゼ阻害薬が使われることがあります。中等度以降ではメマンチンが有効な場合もあります。精神症状への対応
抑うつには抗うつ薬、不眠には睡眠薬、幻覚や興奮には少量の抗精神病薬を慎重に使用します。
非薬物療法
認知リハビリ:回想法や音楽療法などで脳を刺激。
運動習慣:軽いウォーキングや体操で血流改善。
社会参加:デイサービスや地域活動に参加して孤立を防ぐ。
生活指導
嗜銀顆粒性認知症の進行を少しでも遅らせるためには、日々の生活がとても大切です。
規則正しい生活リズムを整える。
趣味や家事をできる範囲で続ける。
栄養バランスの取れた食事を心がける。
家の中を整理して転倒を防ぐ。
家族や介護者は一人で抱え込まず、介護保険サービスを積極的に利用する。
認知症外来では、患者さん本人だけでなくご家族へのサポートも重視しています。
当院の取り組み
当院の認知症外来では、物忘れやMCIの段階から丁寧に評価し、早期発見・早期対応を心がけています。
問診と認知機能検査
MRIによる画像評価
薬物療法と非薬物療法のバランスのとれた治療方針
生活指導
ご家族への相談支援や介護保険申請のサポート
「年齢のせい」と思っていた物忘れが、実は治療や生活改善でコントロールできる場合もあります。ご本人はもちろん、ご家族にとっても安心していただける診療を目指しています。
まとめ
嗜銀顆粒性認知症は、物忘れや感情の変化、行動異常を特徴とする認知症です。MCIや物忘れの段階から気づくことで、生活の工夫や治療により進行を遅らせることができます。
「最近の物忘れが気になる」「性格が変わってきた気がする」と感じたら、ぜひ早めに認知症外来を受診してください。早期発見・早期介入が、本人の生活の質を守る大切な一歩となります。
東大阪みき脳神経外科クリニックではMRIを導入しており同日検査、同日結果説明行っております。 また治療薬に関しても処方可能です。お気軽にご相談下さい。