**SUNHA(短時間持続性片側神経痛様頭痛発作)**は、**三叉神経・自律神経性頭痛(Trigeminal Autonomic Cephalalgias,TACs)**に分類されるまれな頭痛疾患の一種で、極めて短い持続時間で反復性に発作が起こることが特徴です。SUNHAはさらに以下の2つのサブタイプに分類されます。
- SUNCT(Short-lasting Unilateral Neuralgiform headache attacks with Conjunctival injection and Tearing):結膜充血と流涙を伴う
- SUNA(Short-lasting Unilateral Neuralgiform headache attacks with cranial Autonomic symptoms):何らかの自律神経症状を伴うが、結膜充血や流涙を必ずしも伴わない
両者は臨床的には非常に似ており、まとめて「SUNHA」として扱われることもあります。
原因
SUNHAの正確な原因は不明ですが、三叉神経と脳幹・視床下部を含む神経ネットワークの異常が関与していると考えられています。特に、三叉神経が血管や腫瘍などにより物理的に圧迫される「神経血管圧迫(NVC:neurovascular compression)」が関与するケースが報告されています。
一部の患者では、脳MRIで三叉神経への血管の圧迫が確認されており、このような例では神経の過敏性が増して異常な痛みを引き起こすと考えられます。
症状
SUNHAの症状は以下の通りです。
- 発作性の強烈な片側の顔面痛
- 電撃痛や焼けるような痛み、針で刺すような痛みと表現される
- 発作の持続時間は1秒〜数分(多くは10秒以内)
- 1日の発作頻度は数回から数百回に及ぶ
- 痛みの部位は主に目の奥、こめかみ、額、頬など三叉神経の支配領域
- 自律神経症状の併発
- 結膜充血、流涙、鼻汁、鼻閉、顔面発汗、瞳孔縮小、眼瞼下垂など(SUNCTでは流涙と結膜充血が特徴的)
痛みは突然始まり、同様に突然終わります。就寝中に発作が起こることは稀で、覚醒時に多く発症します。
診断
診断は**国際頭痛分類(ICHD-3)**に基づいて行われます。主な診断基準は以下の通りです。
- 発作性の極めて短い片側顔面痛(1秒~10分)
- 頻回の発作(1日1回〜数百回)
- 少なくとも1種類以上の同側の自律神経症状の併発
- 他の疾患(特に神経血管性のもの)による症状でないこと
また、脳腫瘍、動静脈奇形、多発性硬化症、脳幹病変などの二次性SUNHAを除外するため、頭部MRIなどの画像検査が必須となります。
治療・治療薬
SUNHAの治療は難渋することが多く、発作予防を目的とした薬物治療が中心となります。以下の薬剤が使用されます。
ラモトリギン(Lamotrigine)
- 抗てんかん薬。最も効果が確認されている薬のひとつ
- 発作頻度を有意に減少させる例が多い
- 副作用として皮疹、眠気、めまいなどがあり、特に重篤なスティーブンス・ジョンソン症候群には注意が必要
カルバマゼピン(Carbamazepine)/オキカルバゼピン(Oxcarbazepine)
- 三叉神経痛の治療にも用いられる抗てんかん薬
- 効果を示す例もあるが、SUNHAではラモトリギンよりも効果が劣るとされる
ガバペンチン、プレガバリン
- 神経障害性疼痛の治療薬としても使用され、補助的に用いられる
静注リドカイン
- 重症例で、薬剤が効かない場合に一時的な効果を期待して使用される
外科的治療:神経血管減圧術(Microvascular Decompression: MVD)
- 神経血管圧迫がMRIで明らかな場合、三叉神経への圧迫を解放する手術が行われることがあります
- 薬物抵抗性のSUNHAに対して有効な場合があります
予後
SUNHAは慢性かつ難治性であることが多く、生活の質に大きく影響します。ただし、適切な治療により発作が大幅に軽減されることもあるため、早期の診断と治療開始が重要です。
また、神経血管圧迫が原因である場合、手術により根治する可能性もあります。一方で、長期的な経過では薬剤への耐性や副作用の問題もあり、継続的なフォローアップが必要です。
まとめ
SUNHAは、非常に短時間で反復的に起こる激しい片側顔面痛と自律神経症状を特徴とするまれな頭痛疾患です。原因としては神経血管圧迫が関与する場合もあり、薬物治療や外科的治療が選択肢となります。診断と治療には頭痛専門医の関与が重要であり、生活の質向上のために適切な管理が必要です。