認知症に対する介護保険取得の方法

認知症は、記憶障害や判断力の低下、日常生活の困難などを引き起こす進行性の病気です。高齢化社会の中で、認知症患者は年々増加しており、本人とその家族の生活に大きな影響を及ぼします。そこで、重要になるのが「介護保険制度」の活用です。介護保険を取得・利用することで、認知症の方に必要な支援や介護サービスを受けることができ、生活の質を保つための大きな助けとなります。

介護保険制度の概要

介護保険は、40歳以上の国民が加入する制度で、65歳以上の「第1号被保険者」と、40~64歳の「第2号被保険者」に分かれます。65歳以上で認知症になった場合は、原則として介護保険の申請が可能です。40~64歳の方は、初老期認知症(アルツハイマー病など16の特定疾病)の場合に限って申請可能です。

申請の流れ

① 市区町村への申請
介護保険の申請は、お住まいの市区町村(介護保険担当窓口)に行います。本人または家族が申請可能ですが、地域包括支援センターやケアマネジャー、医療機関の支援を受けながら申請することも可能です。申請書類には、認知症の診断書や医師の意見書の提出が求められることがあります。
② 要介護認定のための訪問調査
申請後、市町村の委託を受けた調査員が自宅などを訪問し、本人の心身の状態を聞き取る「訪問調査」が行われます。調査項目は74項目にわたり、日常生活動作(ADL)、認知機能、行動・心理症状などが評価されます。
③ 主治医意見書の作成
本人のかかりつけ医(主治医)が、病状や認知機能、日常生活の様子などについて意見書を作成します。これは市町村から依頼されるため、患者側が直接依頼する必要はありません。
④ 要介護認定審査会による判定
訪問調査の結果と主治医意見書を基に、コンピュータによる一次判定と、介護認定審査会(医師や福祉専門職等で構成)による二次判定が行われ、「要支援1~2」または「要介護1~5」の認定が出されます。
⑤ 結果の通知と介護サービス利用開始
申請から結果通知までは、原則30日以内です。認定結果が出た後、ケアマネジャーとともに「ケアプラン(介護サービス計画)」を作成し、訪問介護、通所介護、デイサービス、福祉用具レンタルなどの必要なサービスを利用することができます。

注意点とポイント

  • **認知症であることだけではなく、「どの程度日常生活に支障をきたしているか」が重要です。**認知症の進行具合や周辺症状(徘徊、幻覚、昼夜逆転など)によって、認定のレベルが変わります。
  • 申請は早めに行うことが望ましいです。 認知症は進行する病気のため、介護が必要になる前に情報を集め、早期に申請することでスムーズに支援が受けられます。
  • 不服がある場合の再申請も可能です。認定結果に納得できない場合、区分変更申請や不服申し立ても行えます。

地域包括支援センターの活用

地域包括支援センターは、高齢者やその家族の相談窓口として全国に設置されています。介護保険の申請手続きや認知症に関する相談、サービス事業所の紹介などを無料で受けることができます。制度が複雑で分かりづらいと感じた場合は、まず地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

まとめ

認知症と診断された場合、介護保険制度の利用は、本人と家族の負担を大きく軽減するための重要な手段です。申請には、医師の診断、訪問調査、審査会を経る必要がありますが、地域包括支援センターなどの支援を活用することで、スムーズな手続きが可能になります。適切な介護サービスを受けることで、認知症の方の生活の質を保ち、家族の安心にもつながります。認知症が疑われた時点で早めに情報収集と申請を行うことが、将来的な安心につながります。

ご希望があれば、当院にてMRIや認知機能テスト(MMSE)を行い、診断を確定し、自治体別の具体的な申請窓口や必要書類の例などもご案内できます。お気軽にご相談ください。