介護保険について

「認知症と診断されたら介護保険を申請した方がいい?」

「要介護1と要介護3は何が違う?」

「デイサービスやヘルパーはどうすれば利用できる?」

認知症や脳卒中などによって日常生活に支援が必要になったとき、患者さん本人だけでなく、ご家族を支える重要な制度が介護保険です。

しかし、実際には、どこに申請するのか、介護度はどう決まるのか、認定されたら何ができるのかが分かりにくい制度でもあります。

今回は介護保険の申請から要介護認定、利用できるサービスまで分かりやすく解説します。

 

介護保険とは?

介護保険は、高齢者などが介護を必要とする状態になった場合に、必要な介護サービスを少ない自己負担で利用できる公的制度です。

65歳以上の方(第1号被保険者)は、原因を問わず要介護・要支援状態と認定されれば介護保険サービスを利用できます。

40~64歳の方(第2号被保険者)は、初老期における認知症や脳血管疾患など、介護保険で定められた特定疾病によって介護が必要になった場合が対象となります。

 

認知症と診断されたら介護保険を申請した方がいい?

必ず申請しなければならないわけではありません。

しかし、

  • 薬を飲み忘れる
  • 食事の準備が難しくなった
  • 買い物ができなくなってきた
  • 一人で外出するのが心配
  • 入浴に介助が必要
  • デイサービスを利用したい
  • 家族の介護負担が大きくなってきた

といった状況があれば、介護保険申請を検討するタイミングです。

特に認知症では、身体は元気でも、服薬管理、金銭管理、徘徊、見守りなどに多くの介護が必要になることがあります。

要介護度は病名の重症度そのものではなく、「日常生活でどの程度の介護の手間が必要か」をもとに判定されます。

 

介護保険はどうやって申請する?

介護保険サービスを利用するには、まず要介護・要支援認定を受けます。

基本的な流れは次の通りです。

① 市区町村へ申請

本人または家族が、お住まいの市区町村の介護保険窓口などで申請します。

地域包括支援センターなどに相談することもできます。

↓

② 認定調査

市区町村などの認定調査員が自宅や施設を訪問します。

本人の、

  • 歩行
  • 食事
  • 入浴
  • 排泄
  • 着替え
  • 認知機能
  • 行動・心理症状
  • 日常生活能力

などを確認します。

↓

③ 主治医意見書

市区町村から主治医へ主治医意見書の作成依頼が届きます。

ここには、

  • 病名
  • 身体機能
  • 認知機能
  • 認知症の行動・心理症状
  • 医療処置
  • 介護に影響する状態

などを記載します。

↓

④ 一次判定

認定調査と主治医意見書の一部をもとに、全国共通の方法でコンピューターによる一次判定が行われます。

↓

⑤ 介護認定審査会

医療・保健・福祉の専門家が一次判定、主治医意見書などを確認し、二次判定を行います。

↓

⑥ 要介護度決定

最終的に、

非該当
要支援1・2
要介護1~5

のいずれかに認定されます。

申請から結果通知までは原則30日以内とされています。

 

主治医意見書はなぜ重要?

認知症では特に重要です。

診察室では普通に会話できていても、自宅では、

「何度も同じことを聞く」

「薬を管理できない」

「夜中に外へ出てしまう」

「一人で買い物に行けない」

といった問題が起きていることがあります。

認知症の方では身体機能だけを評価すると、実際に必要な介護量が十分伝わらないことがあります。

そのため、ご家族から普段の生活状況を詳しく伺い、認知機能や生活上の問題を主治医意見書へ反映することが重要です。

 

要支援1・2、要介護1~5とは?

介護認定は7段階に分かれます。

要支援1

基本的な日常生活はほぼ自立していますが、一部に支援が必要な状態です。

介護予防を目的としたサービスを利用します。

要支援2

要支援1よりも生活機能が低下しており、家事や移動などにより多くの支援が必要な状態です。

要介護1

立ち上がりや歩行、入浴など日常生活の一部に介助が必要な状態です。

認知症による生活管理能力の低下などによって要介護となることもあります。

要介護2

日常生活の複数の場面で介助が必要になっている状態です。

要介護3

食事、排泄、入浴、移動などで介助を必要とする場面が増え、日常生活全般にかなりの支援が必要になります。

要介護4

日常生活の多くの場面で全面的な介助が必要な状態です。

要介護5

最も介護量が多く、食事、排泄、移動など日常生活のほぼ全般に介助が必要な状態です。

 

「認知症が重い=要介護5」ではありません

ここは非常に重要です。

要介護度は病気の重症度を表す数字ではなく、介護に必要な手間を評価したものです。

そのため、認知症が進行していても身体能力が保たれている場合と、脳卒中後に麻痺があり移動や排泄に全面的な介助が必要な場合では、必要な介護量が異なります。

認知症の場合には、

  • 徘徊
  • 服薬管理
  • 金銭管理
  • 火の不始末
  • 昼夜逆転
  • 妄想
  • 介護への抵抗

なども介護負担として重要です。

 

介護保険でどんなサービスが利用できる?

介護保険には非常に多くのサービスがあります。

代表的なものをご紹介します。

訪問介護(ホームヘルプ)

ヘルパーが自宅を訪問し、

  • 食事
  • 排泄
  • 入浴
  • 掃除
  • 洗濯

など、必要な身体介護・生活援助を行います。

デイサービス(通所介護)

施設へ通い、

  • 食事
  • 入浴
  • レクリエーション
  • 運動
  • 他者との交流

などを行います。

認知症の方では生活リズムを整えたり、社会とのつながりを維持したりする意味でも重要です。

デイケア(通所リハビリテーション)

医師の指示のもと、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などによるリハビリテーションを行います。

訪問看護

看護師などが自宅を訪問し、

  • 健康状態の確認
  • 医療処置
  • 服薬管理
  • 療養相談

などを行います。

訪問リハビリ

リハビリ専門職が自宅を訪問し、歩行や日常生活動作などの訓練を行います。

ショートステイ

一定期間、介護施設に宿泊できます。

本人の介護だけでなく、介護する家族の休息(レスパイト)という重要な役割があります。

福祉用具

状態に応じて、

  • 車いす
  • 介護ベッド
  • 歩行器
  • 手すり

などのレンタル・購入制度を利用できます。

住宅改修

条件を満たせば、

  • 手すりの設置
  • 段差解消
  • 滑りにくい床への変更

などの住宅改修にも介護保険を利用できます。

施設入所にも介護保険が利用できる

自宅での生活が難しくなった場合には、

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院

などの施設サービスがあります。

認知症の方では、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)という選択肢もあります。

ただし、施設によって対象となる要介護度や目的、費用が異なります。

 

ケアマネジャーとは?

要介護認定を受けた後に重要になるのが、ケアマネジャー(介護支援専門員)です。

本人や家族と相談しながら、

「週2回デイサービスへ行く」

「訪問介護を利用する」

「福祉用具を導入する」

など、必要なサービスを組み合わせたケアプランを作成します。

介護サービスは「たくさん使えばよい」というものではありません。

本人の能力をできるだけ維持しながら、家族の介護負担も減らせるようサービスを組み合わせることが大切です。

 

介護保険はいくらかかる?

介護保険サービスの自己負担は、原則としてサービス費の1割です。

所得によっては2割または3割負担となります。

また、在宅サービスでは要介護度によって1か月に介護保険を利用できる上限(区分支給限度基準額)が決まっています。

 

認知症では「介護保険+医療」の連携が重要

認知症の治療は薬を処方するだけでは十分ではありません。

医療機関では、

  • 認知症の原因診断
  • MRI
  • 認知機能検査
  • 薬物治療
  • BPSDへの対応

などを行います。

一方、日常生活を支えるのは、ケアマネジャー・訪問看護・デイサービス・地域包括支援センター・介護施設などの介護・福祉サービスです。

つまり認知症では、医療と介護をつなぐことが非常に重要です。

当院の認知症外来では、物忘れや認知症が疑われる患者さんに、

  • 問診
  • MMSEなどの認知機能検査
  • MRI
  • 血液検査

などを行い、認知機能低下の原因を評価しています。

アルツハイマー病だけでなく、脳血管障害、正常圧水頭症など、治療可能な原因が隠れていないか確認することも重要です。

また、必要な患者さんでは介護保険の主治医意見書を作成し、介護サービスの導入につなげています。

認知症は医療機関だけで支える病気ではありません。

患者さんとご家族ができるだけ安心して生活を続けられるよう、地域の介護・福祉サービスと連携していくことが大切です。

 

東大阪市で介護保険を申請するには?

東大阪市にお住まいの方が介護保険サービスを利用するには、まず要介護・要支援認定の申請を行います。

申請は本人または家族が行うことができます。

また、ご本人やご家族が申請することが難しい場合には、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業所などに申請を代行してもらうこともできます。

東大阪市の介護保険申請窓口

東大阪市 福祉部高齢介護室 介護認定課

所在地
〒577-8521
東大阪市荒本北一丁目1番1号
東大阪市役所

電話
06-4309-3190

FAX
06-4309-3814

要介護・要支援認定の新規申請や、介護度の変更などについて相談できます。

また、東大阪市では各福祉事務所の高齢・障害福祉係でも要介護・要支援認定の申請を受け付けています。

「介護保険を使った方がいい?」と迷ったら地域包括支援センターへ

介護保険を申請すべきか分からない場合には、地域包括支援センターへの相談がおすすめです。

地域包括支援センターは、高齢者とそのご家族のための地域の総合相談窓口です。

例えば、

  • 介護保険を利用したい
  • 要介護認定の申請方法が分からない
  • 最近、親の物忘れが増えて心配
  • 一人暮らしを続けられるか心配
  • デイサービスを利用したい
  • ケアマネジャーについて相談したい
  • 成年後見制度について知りたい

などを相談できます。

東大阪市では住所によって担当する地域包括支援センターが決まっています。

担当の地域包括支援センターが分からない場合

東大阪市 福祉部高齢介護室 地域包括ケア推進課

電話:06-4309-3013
FAX:06-4309-3814

へ問い合わせると、担当する地域包括支援センターを確認できます。

東大阪市の福祉事務所でも相談できます

お住まいの地域に応じて、以下の窓口があります。

東福祉事務所 高齢・障害福祉係

東大阪市旭町1-1
電話:072-988-6617

中福祉事務所 高齢・障害福祉係

東大阪市岩田町4-3-22-300
電話:072-960-9275

西福祉事務所 高齢・障害福祉係

東大阪市高井田元町2-8-27
電話:06-6784-7981

要介護・要支援認定の申請について相談できます。

 

Q&A

Q1. 認知症と診断されたら必ず介護保険を申請できますか?

65歳以上で日常生活に支援や介護が必要であれば申請できます。ただし、認知症という診断だけで介護度が決まるわけではなく、実際に必要な介護量をもとに判定されます。

Q2. 本人ではなく家族でも申請できますか?

はい。本人だけでなく家族などが申請手続きを行うことができます。地域包括支援センターなどに相談することもできます。

Q3. 要介護認定にはどのくらい時間がかかりますか?

申請から認定通知までは原則30日以内とされています。

Q4. 要介護1でもデイサービスを利用できますか?

利用できます。ケアマネジャーと相談して、本人に必要なサービスを組み合わせます。

Q5. 介護度が実際の状態と合っていない場合は?

状態が悪化した場合などには、認定の有効期間中でも区分変更申請を検討できます。ケアマネジャーへ相談してください。

参考文献
  1. 厚生労働省.要介護認定に係る制度の概要
  2. 厚生労働省.介護保険制度における要介護認定の仕組み
  3. 厚生労働省.介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」
  4. 厚生労働省.介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」
  5. 厚生労働省.介護保険制度における利用者負担

 

執筆 三木 貴徳(みき たかのり)

東大阪みき脳神経外科クリニック 院長

資格

  • 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
  • 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
  • 日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医

所属学会

  • 日本頭痛学会
  • 日本認知症学会

脳卒中・頭痛・認知症などの脳神経疾患を中心に診療しています。