脳神経外科で扱う耳鳴
「キーンという耳鳴りが続いている」
「片耳だけ耳鳴りがする」
「心臓の拍動に合わせてドクドクと音がする」
耳鳴りは比較的よくみられる症状で、加齢性難聴や内耳の障害など、耳の病気が原因となることが多い症状です。
しかし、なかには脳腫瘍や脳血管の異常など、脳神経外科での精密検査が必要な病気が隠れている場合があります。
今回は、耳鳴りの種類と、脳神経外科で注意すべき疾患について解説します。
1.耳鳴りにはどんな種類がある?
耳鳴りは、大きく2つに分けて考えることができます。
① 非拍動性耳鳴り
「キーン」「ジー」「ピー」など、一定の音が聞こえるタイプです。
加齢性難聴、騒音性難聴、突発性難聴、メニエール病などが代表的な原因です。
一方、片側だけに持続する耳鳴りでは、聴神経腫瘍などにも注意が必要です。
② 拍動性耳鳴り
「ドクドク」「ザーザー」など、心臓の拍動に合わせて聞こえるタイプです。
血流に関連した音である場合があり、脳血管の異常や頭蓋内圧の上昇などが原因となることがあります。
特に持続する拍動性耳鳴りでは、原因を調べることが重要です。
2.脳神経外科で注意したい耳鳴りの原因疾患
① 聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)
聴神経腫瘍は、主に前庭神経から発生する良性腫瘍です。
代表的な症状は、
- 片側の耳鳴り
- 片側の難聴
- 聞こえにくさ
- ふらつき
などです。
徐々に症状が進行することが多く、片耳だけに耳鳴りが続く場合には注意が必要です。
診断には内耳道を含むMRI検査が有用です。
② 硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)
硬膜動静脈瘻は、脳を包む硬膜にある動脈と静脈が異常につながる病気です。
血流の異常によって、心臓の拍動に一致した耳鳴りが起こることがあります。
病変の場所や静脈への血液の流れ方によっては、脳出血などのリスクを伴う場合があります。
MRI・MRAやCTAなどで評価し、必要に応じて脳血管造影検査を行います。
③ 頭蓋内の静脈洞狭窄・頭蓋内圧亢進症
脳の静脈血が流れる静脈洞の狭窄や、特発性頭蓋内圧亢進症でも拍動性耳鳴りが起こることがあります。
耳鳴りに加えて、
- 頭痛
- 一時的に目がかすむ
- 視力低下
- 物が二重に見える
などの症状を伴う場合があります。
MRI・MRVなどに加え、眼底検査などが重要です。
④ 頚動脈などの血管病変
頚動脈狭窄や動脈解離など、頭頚部の血管病変が拍動性耳鳴りの原因になる場合があります。
特に突然の頭痛や頚部痛、神経症状を伴う場合には、緊急の評価が必要です。
3.放置してはいけない耳鳴りの特徴
次のような耳鳴りは、早めの医療機関受診をおすすめします。
- 片側だけに持続する耳鳴り
- 心臓の拍動に合わせた耳鳴り
- 耳鳴りとともに難聴が進行している
- 耳鳴りに頭痛や視覚異常を伴う
- 耳鳴りにふらつきや顔面のしびれを伴う
特に、突然耳が聞こえにくくなった場合は、突発性難聴などの可能性があるため、原則24時間以内を目安に耳鼻咽喉科などで評価を受けることが重要です。
また、突然の麻痺、言語障害、激しい頭痛などを伴う場合には、救急受診が必要です。
4.耳鳴りにMRI検査は必要?
すべての耳鳴りにMRI検査が必要なわけではありません。
まずは耳鼻咽喉科での診察や聴力検査が基本となります。
一方、次のような場合には画像検査を検討します。
- 片側性の耳鳴り
- 左右差のある難聴
- 拍動性耳鳴り
- 神経学的異常を伴う場合
聴神経腫瘍が疑われる場合には、内耳道を含むMRIが重要です。
拍動性耳鳴りでは、MRI・MRA・MRV、CT・CTAなどを病状に応じて使い分けます。
通常の頭部MRIやMRAだけですべての原因を除外できるわけではありません。
よくある質問(Q&A)
Q1.耳鳴りは放っておいても大丈夫ですか?
一時的な耳鳴りもありますが、持続する耳鳴りや片側だけの耳鳴り、拍動性耳鳴りは原因を確認することが大切です。
Q2.耳鳴りだけで脳腫瘍の可能性はありますか?
あります。聴神経腫瘍では片側の耳鳴りが初期症状となることがあります。ただし、耳鳴りの原因として脳腫瘍はまれです。
Q3.ドクドクする耳鳴りは危険ですか?
拍動性耳鳴りと呼ばれ、硬膜動静脈瘻や静脈洞狭窄などの血管病変が原因となる場合があります。持続する場合は画像検査を含めた評価が推奨されます。
Q4.耳鳴りは脳神経外科と耳鼻咽喉科のどちらを受診すればよいですか?
基本的には耳鼻咽喉科が最初の相談先です。脳腫瘍や脳血管疾患が疑われる場合には、脳神経外科での精密検査が必要になります。
Q5.MRIが正常なら耳鳴りの原因はないのでしょうか?
いいえ。内耳の障害や難聴に伴う耳鳴りでは、MRIに異常がない場合もあります。聴力検査などを組み合わせた評価が重要です。
まとめ|片側の耳鳴り・拍動性耳鳴りには注意
耳鳴りの多くは耳の病気に関連していますが、なかには聴神経腫瘍、硬膜動静脈瘻、頭蓋内静脈洞狭窄などの病気が隠れていることがあります。
特に、片側だけの耳鳴り、心臓の拍動に合わせた耳鳴り、神経症状を伴う耳鳴りは、放置せず適切な評価を受けることが大切です。
東大阪みき脳神経外科クリニックでは、脳神経外科的な原因が疑われる場合に、必要に応じてMRI・MRA検査による評価を行っています。
大阪市・東大阪市・八尾市で、耳鳴りに加えて頭痛やふらつきなどの症状があり、脳の病気が心配な方はご相談ください。
参考文献
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Tinnitus: assessment and management. NG155. 2020.
- American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery Foundation. Clinical Practice Guideline: Tinnitus Update. 2026.
- American College of Radiology. ACR Appropriateness Criteria: Tinnitus—2023 Update. J Am Coll Radiol.
- European Society of Head and Neck Radiology. ESR Essentials: diagnostic strategies in tinnitus—practice recommendations. 2025.
- Pulsatile Tinnitus: A Comprehensive Clinical Approach to Diagnosis and Management. 2025.
執筆 三木 貴徳(みき たかのり)
東大阪みき脳神経外科クリニック 院長
資格
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
- 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
- 日本脳神経血管内治療学会 神経血管内治療専門医
所属学会
- 日本頭痛学会
- 日本認知症学会

