「最近、物忘れが気になる」「将来、認知症にならないか不安」――。
そう感じている方に今すぐ始めてほしいのが、**“運動習慣”**です。

実は、運動は最も効果が実証されている認知症予防法のひとつです。
身体を動かすことで脳の血流が改善し、神経細胞が活性化。記憶力や集中力の低下を防ぐことができます。

当院の認知症外来・脳神経外科でも、薬やサプリメントよりもまず「運動」を重視しています。
ここでは、認知症対策としておすすめの運動と、その科学的根拠を詳しくご紹介します。


運動が認知症予防に効く理由

① 脳の血流を改善する

運動を行うと、心拍数が上がり、脳への血流が増加します。
これにより、脳の神経細胞が活発に働き、記憶を司る海馬の萎縮を防ぐことができます。

② 脳内物質(BDNF)を増やす

運動によって分泌される「BDNF(脳由来神経栄養因子)」は、脳の神経細胞を修復・再生する物質です。
BDNFが多いほど記憶力・思考力が高いことが分かっており、**“脳の成長ホルモン”**とも呼ばれています。

③ ストレスを減らし、睡眠を改善する

適度な運動はストレスホルモンを減らし、気分を安定させます。
また、睡眠の質が向上することで、脳内の老廃物(アミロイドβ)の排出が促され、アルツハイマー型認知症の予防につながります。


認知症予防におすすめの運動

1. ウォーキング(有酸素運動)

もっとも手軽で効果的なのがウォーキングです。
週3回以上、1回30分〜1時間を目安に歩くことで、脳の血流と代謝が改善します。

特に「やや息が弾む程度」の早歩きがおすすめです。
東大阪市など都市部でも、公園や河川敷などを利用すれば気軽に継続できます。

2. 筋トレ(無酸素運動)

脚や体幹の筋力を維持することで、転倒や骨折を防ぎ、活動的な生活を保てます。
筋肉が動くと「マイオカイン」というホルモンが分泌され、脳の神経細胞を守る働きもあることが分かっています。

スクワットやかかと上げ運動など、自宅で簡単にできるメニューから始めましょう。

3. 脳トレ運動(デュアルタスク)

「歩きながら計算する」「ステップしながら会話する」など、体と脳を同時に使う運動は、より効果的です。
研究では、デュアルタスク運動を行ったグループのほうが、記憶力・判断力の改善が大きかったと報告されています(厚生労働省・認知症施策推進総合戦略より)。


続けるためのポイント

  • 目標は“完璧”より“継続”
     1日10分でもOK。続けることが最大の予防になります。

  • 仲間と一緒に
     地域の運動サークルや介護予防教室への参加は、社会的交流の維持にもつながります。

  • 無理のない範囲で
     高血圧・心疾患のある方は、医師の指導のもとで行いましょう。


MCI(軽度認知障害)の段階で始める運動が鍵

「物忘れが気になるけれど生活には支障がない」という段階を**MCI(軽度認知障害)**といいます。
この時期に運動を始めることで、認知症への進行を防げる可能性が高いと報告されています。

当院では、MCIの早期発見のために認知機能検査(HDS-R・MMSE)やMRI検査を行い、運動療法を組み合わせた予防プランを提案しています。


患者様へのメッセージ

認知症は「運動で防げる病気」です。
特別な器具や高強度なトレーニングは必要ありません。
日常の中で少し体を動かすだけでも、脳は確実に若返ります。

「外に出るのが億劫」「何をすればいいか分からない」という方も、まずは週に2〜3回のウォーキングから始めてみましょう。

当院の認知症外来・脳神経外科では、医学的根拠に基づいた運動指導や生活改善サポートを行っています。
患者様お一人おひとりに合わせた「無理なく続けられる運動法」で、脳と体の健康を守ります。

今日の一歩が、10年後のあなたの記憶を守る第一歩です。