痛み止めの薬が引き起こす頭痛
「頭痛があるたびに痛み止めを飲んでいる」
「以前より薬が効きにくくなった」
「毎日のように頭痛が続いている」
このような症状は、**薬剤の使用過多による頭痛(Medication Overuse Headache:MOH)**かもしれません。
薬を飲み過ぎることで、かえって頭痛が慢性化することがあるため、頭痛外来では特に注意が必要な病気です。
大阪市・東大阪市・八尾市の頭痛外来や脳神経外科でも、市販の鎮痛薬や処方薬を頻繁に使用している患者さんが少なくありません。
今回は、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)の原因・診断・治療・予防について、MRI検査の必要性も含めてわかりやすく解説します。
薬剤の使用過多による頭痛(MOH)とは?
MOHとは、頭痛を治すために飲んでいる鎮痛薬が原因となり、頭痛が慢性化してしまう病気です。
国際頭痛分類(ICHD-3)では二次性頭痛に分類されています。
多くの場合、
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
などがもともとあり、その治療薬を頻繁に使用することで発症します。
頭痛外来では、慢性頭痛の患者さんで必ず確認する重要な疾患です。
どれくらい多い病気?
世界では成人の約1〜2%がMOHと推定されています。
慢性頭痛患者さんでは**30〜50%**がMOHを合併していると報告されています。
また、日本でも慢性片頭痛患者さんの約30〜40%にMOHが認められると報告されています。
頭痛外来では決して珍しい病気ではありません。
なぜ痛み止めで頭痛が悪化するの?
鎮痛薬を頻繁に使用すると、脳の痛みを調節する仕組みが変化し、少しの刺激でも痛みを感じやすい状態(中枢性感作)になります。
その結果、頭痛 → 鎮痛薬 → 一時的改善 → 再び頭痛 → さらに鎮痛薬という悪循環に陥ります。
MOHの診断基準
以下の条件を満たす場合、MOHが疑われます。
- 月15日以上の頭痛が3か月以上続く
- 急性期治療薬を3か月以上使用している
- 薬剤の使用頻度が基準を超えている
頭痛外来では、頭痛日記や服薬状況を詳しく確認します。
使用回数の目安
月10日以上で注意が必要な薬
- トリプタン製剤
- エルゴタミン製剤
- オピオイド
- 複合鎮痛薬
月15日以上で注意が必要な薬
- ロキソニン
- カロナール
- NSAIDs
- アセトアミノフェン
※個人差があるため、少ない回数でもMOHになることがあります。
市販薬でも起こります
市販薬だから安全というわけではありません。
以下の薬でもMOHは起こります。
- ロキソニンS
- バファリン
- イブ
- ノーシン
- セデス
市販薬を長期間使用している方は、頭痛外来で相談することをおすすめします。
MRI検査が重要な理由
薬の飲み過ぎによる頭痛と思っていても、
実際には、
- 脳腫瘍
- 脳動脈瘤
- 脳出血
- 脳静脈洞血栓症
- RCVS
などの二次性頭痛が隠れていることがあります。
そのため頭痛外来や脳神経外科では、必要に応じてMRI検査を行い、危険な病気を除外します。
MOHの治療
① 原因薬剤を減量・中止する
最も重要な治療です。
自己判断ではなく、頭痛外来で計画的に減量することが望まれます。
② 予防治療を開始する
片頭痛が原因の場合は、
- アクイプタ
- ナルティーク
- エムガルティ
- アジョビ
- アイモビーグ
などの予防治療を検討します。
③ 生活習慣の見直し
- 規則正しい睡眠
- 水分補給
- 食生活の改善
- ストレス管理
- 適度な運動
も重要です。
MOHは改善する?
適切な治療により、約50〜70%の患者さんで頭痛が改善すると報告されています。
ただし、治療開始後1〜2週間程度は一時的に頭痛が悪化することがあり、「離脱頭痛」と呼ばれます。
頭痛外来では、この時期も含めてサポートしながら治療を進めます。
頭痛日記が重要です
頭痛外来では、
- 頭痛の日数
- 痛み止めを飲んだ日
- 頭痛の程度
- 誘因
を記録する「頭痛日記」をおすすめしています。
これにより、MOHの診断や治療効果を確認しやすくなります。
MOHに関するデータ
- 世界の有病率:約1〜2%
- 慢性頭痛患者の30〜50%がMOH
- 日本の片頭痛患者数:約840万人
- 約70%が医療機関未受診
- 適切な治療で約50〜70%が改善
- 女性に多く、30〜50歳代で発症しやすい
- 月15日以上の頭痛はMOHを疑う重要なサイン
Q&A
Q1. 市販薬でもMOHになりますか?
はい。
ロキソニンやイブなどの市販薬でも起こる可能性があります。
Q2. 痛み止めはすぐにやめた方がいいですか?
自己判断で中止すると頭痛が悪化することがあります。
頭痛外来で相談しながら減量することをおすすめします。
Q3. MRI検査は必要ですか?
危険な二次性頭痛を除外するため、MRI検査が必要になることがあります。
Q4. MOHは治りますか?
適切な治療で多くの患者さんが改善します。
Q5. MOHを予防するには?
鎮痛薬を必要以上に使用しないこと、頭痛外来で予防治療を受けることが重要です。
参考文献(国内)
- 日本頭痛学会.頭痛の診療ガイドライン2021
- 日本神経学会.慢性頭痛診療ガイドライン
- 日本頭痛学会.国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版
- 日本頭痛学会誌.薬剤の使用過多による頭痛(MOH)の診断と治療
- 日本神経治療学会.頭痛診療指針
参考文献(海外)
- International Headache Society. The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3).
- Diener HC, Holle D, Solbach K, Gaul C. Medication-overuse headache: risk factors, pathophysiology and management. Nat Rev Neurol. 2016.
- European Academy of Neurology Guideline on Medication-Overuse Headache. Eur J Neurol. 2020.
- American Headache Society. The American Headache Society Consensus Statement. Headache. 2021.
- Goadsby PJ, Holland PR, Martins-Oliveira M, et al. Pathophysiology of Migraine. Physiol Rev. 2017.
執筆 三木 貴徳(みき たかのり)
東大阪みき脳神経外科クリニック 院長
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
- 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
- 日本脳神経血管内治療学会 神経血管内治療専門医
所属学会
- 日本頭痛学会
- 日本認知症学会
大阪市・東大阪市・八尾市を中心に、頭痛外来、MRI検査、脳卒中診療、認知症外来、脳ドックに力を入れています。
「頭痛薬を飲んでも頭痛が改善しない」「薬を飲む回数が増えてきた」という方は、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)の可能性があります。お気軽に当院の頭痛外来へご相談ください。
東大阪みき脳神経外科クリニック

