妊娠と頭痛
「妊娠してから頭痛が増えた」
「妊娠中でも片頭痛の薬は飲めますか?」
「妊娠中の頭痛は赤ちゃんに影響しますか?」
このようなお悩みで、大阪市・東大阪市・八尾市の頭痛外来や脳神経外科を受診される妊婦さんは少なくありません。
妊娠中の頭痛は、多くが片頭痛ですが、妊娠高血圧症候群や脳卒中、脳静脈洞血栓症など、緊急性の高い病気が隠れていることもあります。
そのため、妊娠中の頭痛では「いつもの片頭痛」と決めつけず、必要に応じてMRI検査を含めた評価が重要です。
今回は、妊娠と片頭痛の関係、診断、治療、安全な薬の選択についてわかりやすく解説します。
妊娠すると片頭痛はどうなる?
女性ホルモン(エストロゲン)の変化は片頭痛に大きく影響します。
妊娠中はエストロゲン濃度が高く安定するため、多くの方では片頭痛が改善します。
海外の研究では、
- 妊娠第1三半期:約46%が改善
- 第2三半期:約83%が改善
- 第3三半期:約87%が改善
と報告されています。
一方で、約5〜10%では妊娠中に新たな片頭痛が出現したり、悪化したりすることがあります。
産後は頭痛が再発しやすい
出産後はエストロゲンが急激に低下します。
さらに、
- 睡眠不足
- 育児による疲労
- ストレス
- 脱水
などが重なり、産後1か月以内に片頭痛が再発する方が多くみられます。
頭痛外来では、産後の生活背景も考慮しながら治療を行います。
妊娠中に注意すべき危険な頭痛
妊娠中の頭痛は、すべてが片頭痛とは限りません。
次のような病気を除外することが重要です。
- 妊娠高血圧症候群(子癇前症)
- 子癇
- 脳静脈洞血栓症
- 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)
- 脳出血
- くも膜下出血
- 脳腫瘍
- 髄膜炎
以下の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 今まで経験したことのない激しい頭痛
- 突然発症した頭痛
- 手足の麻痺
- ろれつが回らない
- 意識障害
- けいれん
- 視野異常・視力低下
- 高血圧を伴う頭痛
妊娠中でもMRI検査は受けられる?
はい。
MRI検査は放射線を使用しないため、必要性がある場合には妊娠中でも実施できます。
一方で、
- CT検査
- 造影MRI(ガドリニウム造影剤)
は慎重な適応判断が必要です。
頭痛外来や脳神経外科では、母体と胎児への影響を考慮しながら検査を選択します。
妊娠中に使用できる薬
使用が検討される薬
アセトアミノフェン
第一選択とされる鎮痛薬です。
代表例
- カロナール
- タイレノール
適切な量で使用することが重要です。
NSAIDs(ロキソニン・イブプロフェンなど)
妊娠週数によって使用可否が異なります。
特に妊娠後期では胎児の動脈管早期閉鎖や羊水量減少などのリスクがあるため、原則として避けられます。
自己判断での服用は控えましょう。
トリプタン製剤
スマトリプタンは妊娠中の使用経験が比較的多く、大規模研究では明らかな先天異常リスクの増加は示されていません。
ただし、日本では妊娠中の使用は慎重に判断され、産婦人科医や頭痛専門医と相談して適応を決定します。
CGRP関連薬
- エムガルティ
- アジョビ
- アイモビーグ
- アクイプタ
- ナルティーク
については、妊娠中の安全性データが十分ではありません。
現在は原則として妊娠中の使用は推奨されていません。
妊娠中にできる片頭痛対策
薬だけでなく、生活習慣も重要です。
- 十分な睡眠
- 規則正しい食事
- 水分補給
- 軽い運動(主治医の許可がある場合)
- 強い光や騒音を避ける
- ストレスをためない
頭痛日記をつけることも、誘因の把握に役立ちます。
妊娠と片頭痛に関するデータ
- 日本の片頭痛患者数:約840万人
- 女性の有病率:約12%
- 妊娠中に片頭痛が改善する割合:約60〜80%
- 第2〜3三半期では約80%以上が改善
- 産後1か月以内に片頭痛が再発する方が約50%以上
- 片頭痛(特に前兆を伴う片頭痛)は、妊娠高血圧症候群や脳卒中のリスク上昇との関連が報告されています。
Q&A
Q1. 妊娠すると片頭痛は治りますか?
多くの方で改善しますが、すべての方ではありません。
Q2. 妊娠中でもMRI検査は受けられますか?
必要性があれば受けられます。
放射線を使用しないため、危険な頭痛が疑われる場合には重要な検査です。
Q3. ロキソニンを飲んでもいいですか?
妊娠週数によって異なります。
特に妊娠後期は避けることが推奨されます。
Q4. カロナールは安全ですか?
一般的には妊娠中の第一選択薬ですが、自己判断ではなく医師の指示に従って使用してください。
Q5. 妊娠中の頭痛はいつ受診すべきですか?
今までにない頭痛、突然の激しい頭痛、神経症状を伴う頭痛、高血圧を伴う頭痛では、速やかに頭痛外来や脳神経外科、または産婦人科を受診してください。
参考文献(国内)
- 日本頭痛学会.頭痛の診療ガイドライン2021
- 日本産科婦人科学会.産婦人科診療ガイドライン
- 日本神経学会.慢性頭痛診療ガイドライン
- 日本産婦人科医会.妊娠中の薬物療法に関する指針
- 日本頭痛学会誌.女性と片頭痛に関する研究
参考文献(海外)
- American Headache Society. Consensus Statement on Migraine Management in Pregnancy.
- American College of Obstetricians and Gynecologists. Clinical Practice Guideline: Headaches in Pregnancy.
- International Headache Society. International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3).
- Rebecca B. Erwin Wells, et al. Migraine During Pregnancy. Continuum.
- American Migraine Foundation. Migraine and Pregnancy.
執筆 三木 貴徳(みき たかのり)
東大阪みき脳神経外科クリニック 院長
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
- 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
- 日本脳神経血管内治療学会 神経血管内治療専門医
所属学会
- 日本頭痛学会
- 日本認知症学会
大阪市・東大阪市・八尾市を中心に、頭痛外来、MRI検査、脳卒中診療、認知症外来、脳ドックに力を入れています。
妊娠中の頭痛は、片頭痛だけでなく、緊急治療が必要な病気が隠れていることもあります。いつもと違う頭痛や不安な症状がある場合は、お気軽に当院の頭痛外来へご相談ください。

