天気と頭痛の関連

「台風が近づくと頭痛がする」

「雨が降る前から頭が痛くなる」

「季節の変わり目に片頭痛が増える気がする」

頭痛外来では、このような相談を受けることがあります。

特に秋は、秋雨前線や台風によって気圧や天候が大きく変化しやすい季節です。

一般に「気象病」「天気痛」と呼ばれることもありますが、頭痛の中でも特に片頭痛は気象変化の影響を受ける患者さんがいることが知られています。

一方で、すべての片頭痛患者さんが低気圧で悪化するわけではなく、研究結果にもばらつきがあります。

今回は、秋雨前線・台風・低気圧と頭痛の関係について、頭痛外来の視点から解説します。

 

台風や雨の前に頭痛が起こるのはなぜ?

片頭痛は単なる「血管の頭痛」ではありません。

現在では、三叉神経血管系やCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などが関与する神経疾患として理解されています。

片頭痛の脳はさまざまな刺激に対して敏感になっていると考えられ、

  • 睡眠不足
  • ストレス
  • 月経
  • 光
  • 音
  • 臭い
  • 空腹
  • 飲酒
  • 天候・気圧変化

などが発作の誘因になることがあります。

つまり台風や秋雨前線は、片頭痛そのものの「原因」というより、もともと片頭痛を起こしやすい人の発作を誘発するトリガーの一つと考える方が適切です。

 

片頭痛患者さんは天候をトリガーとして挙げることが多い

片頭痛患者さんを対象とした研究では、天候の変化を頭痛の誘因として自覚している患者さんが一定数存在します。

Kelmanによる片頭痛患者1,207人の調査では、53%が天候を片頭痛の誘因として挙げたと報告されています。

ただし、これは「53%の片頭痛が気圧によって起こる」という意味ではありません。

患者さん自身が「天候がトリガーになっている」と感じていた割合です。

実際に気圧・温度・湿度と頭痛発作を客観的に解析した研究では結果が一定しておらず、天候への感受性には大きな個人差があると考えられています。

 

「低気圧」だけが問題ではない?

「気圧が低いほど頭痛が起こる」

と思われがちですが、実際にはもう少し複雑です。

研究では、気圧そのものの低さより、気圧が変化することとの関連を示した報告があります。

台風が近づくと、

  • 気圧
  • 気温
  • 湿度
  • 日照
  • 風

など複数の気象条件が同時に変化します。

さらに台風前後には、

  • 睡眠が乱れる
  • 外出できず運動量が減る
  • ストレスが増える
  • 食事時間が変わる

など生活環境も変化します。

そのため、単純に「低気圧=片頭痛」と説明できるわけではありません。

 

内耳が気圧を感知している?

天気痛のメカニズムとして研究されているのが内耳です。

内耳には気圧変化を感知する仕組みが存在する可能性があり、動物実験では気圧低下によって内耳を介した神経活動の変化が起こることが報告されています。

気圧変化の情報が、

内耳
↓
前庭神経系
↓
自律神経系

などに影響し、頭痛やめまいに関係する可能性が研究されています。

ただし、人間の片頭痛における「気圧センサー」の仕組みが完全に解明されているわけではありません。

 

台風頭痛はどんな症状?

低気圧や台風をきっかけに片頭痛発作が起きた場合、通常の片頭痛と同様に、

  • ズキズキする頭痛
  • 片側または両側の頭痛
  • 動くと悪化する
  • 吐き気
  • 光がまぶしい
  • 音がつらい
  • 臭いに敏感になる

などがみられます。

人によっては頭痛の前に、

  • あくび
  • 眠気
  • 首の違和感
  • 疲労感
  • 集中力低下
  • 気分の変化

などの予兆症状を感じることもあります。

 

「雨が降る前から痛い」のはおかしくない?

患者さんから、「天気予報を見る前から頭痛で雨が分かる」と言われることがあります。

台風や低気圧では、実際に雨が降り始める前から気圧などの気象条件が変化しています。

そのため、気象変化に敏感な患者さんでは、雨が降る前の段階から体調変化を感じる可能性があります。

ただし、頭痛だけで天候を正確に予測できるという医学的根拠が確立しているわけではありません。

 

秋に頭痛が増える理由は気圧だけではない

秋は台風や秋雨前線だけでなく、

  • 朝晩の寒暖差
  • 日照時間の変化
  • 睡眠リズムの変化
  • 夏の疲労
  • 季節の変わり目による生活リズムの変化

などが重なる季節です。

片頭痛は複数のトリガーが重なったときに発作が起こることがあります。

そのため、「低気圧だけを避ければよい」というより、体調を総合的に整えることが大切です。

 

台風・秋雨前線による頭痛の対策

① 頭痛日記をつける

最もおすすめしたいのが頭痛日記です。

記録するのは、

  • 頭痛が起こった日
  • 頭痛の強さ
  • 持続時間
  • 吐き気の有無
  • 月経
  • 睡眠時間
  • 使用した薬
  • 天候

などです。

数週間~数か月記録すると、

「台風の前日に頭痛が起こりやすい」

「雨より睡眠不足の方が影響している」

など、自分自身のパターンが分かってくることがあります。

対策② 睡眠・食事を崩さない

天候は自分では変えられません。

だからこそ、変えられるトリガーを減らすことが重要です。

  • 睡眠不足を避ける
  • 休日も寝過ぎない
  • 食事を抜かない
  • 十分に水分を取る
  • 過度な飲酒を避ける
  • 適度に運動する

といった基本的な生活習慣を整えましょう。

対策③ 急性期治療は適切なタイミングで

片頭痛発作が起こった場合には、

  • NSAIDs
  • トリプタン
  • ラスミジタン(レイボー)
  • CGRP受容体拮抗薬(ゲパント)

などを症状や患者さんの状態に合わせて使用します。

「薬を飲むのはなるべく我慢した方がよい」

と考えて、痛みが強くなるまで待つ患者さんもいます。

しかし片頭痛では、適切な急性期治療薬を適切なタイミングで使用することが重要です。

頭痛外来では、発作の頻度や症状、既往歴などを確認し、その方に合った急性期治療を検討します。

対策④ 頻繁なら予防治療を考える

台風が来るたびに寝込んでしまうなど、片頭痛による生活への支障が大きい場合には、急性期治療だけでなく片頭痛予防治療を検討します。

現在は従来の予防薬に加えて、

  • エムガルティ
  • アジョビ
  • アイモビーグ

などの抗CGRP関連抗体薬や、経口CGRP関連薬など、治療選択肢が増えています。

「天気だから仕方がない」

と諦める必要はありません。

「気圧頭痛」だと思い込むのも危険

非常に重要なポイントです。

台風の日に頭痛が起きたからといって、すべてが片頭痛とは限りません。

特に、

  • 突然発症した激しい頭痛
  • 今まで経験したことのない頭痛
  • 発熱を伴う
  • 意識がおかしい
  • 手足の麻痺・しびれ
  • ろれつが回らない
  • 視野が欠ける
  • 物が二重に見える
  • けいれん

などを伴う場合には、

  • くも膜下出血
  • 脳出血
  • 脳梗塞
  • 脳静脈洞血栓症
  • RCVS
  • 髄膜炎

などの二次性頭痛を除外する必要があります。

「いつもの低気圧頭痛」と自己判断しないことが大切です。

 

頭痛外来では何をする?

頭痛外来では、

  • 頭痛がいつからあるか
  • どのような痛みか
  • 頭痛の頻度
  • 吐き気・光過敏・音過敏
  • 前兆の有無
  • 使用している頭痛薬
  • 生活への支障
  • 天候との関係

などを詳しく確認します。

必要に応じてMRIなどの画像検査を行い、脳疾患による二次性頭痛が隠れていないか評価します。

そのうえで、

「本当に片頭痛なのか」
「どの急性期治療が合うのか」
「予防治療が必要なのか」

を検討します。

 

Q&A

Q1. 低気圧で本当に頭痛は起こりますか?

天候や気圧変化を片頭痛の誘因として感じる患者さんは少なくありません。一方、研究結果は必ずしも一致しておらず、影響には大きな個人差があります。

Q2. 台風が来る前から頭痛がします。なぜですか?

台風接近時には雨が降る前から気圧・湿度などが変化します。こうした変化が頭痛のトリガーとなっている可能性があります。

Q3. 気圧頭痛にはどんな薬が効きますか?

片頭痛であればNSAIDs、トリプタン、ラスミジタン、ゲパントなどを使用します。頭痛の種類によって治療が異なるため、診断が重要です。

Q4. 酔い止めは気圧頭痛に効きますか?

「天気痛には酔い止め」と紹介されることがありますが、片頭痛に対する標準的な急性期治療として確立しているわけではありません。自己判断で常用するのではなく、片頭痛そのものを適切に治療することが重要です。

Q5. 毎月何度も天候で頭痛が起こります。どうすればいいですか?

頭痛日記をつけ、発作頻度と生活への支障を評価しましょう。頻回の場合には頭痛外来で急性期治療の見直しや予防治療を検討します。

まとめ|「天気だから仕方ない」と諦めないでください

秋雨前線や台風の季節に片頭痛が悪化する患者さんはいます。

しかし、

低気圧=必ず頭痛が起こる

という単純な関係ではありません。

気圧・気温・湿度・睡眠・ストレスなど、複数の要因が重なって片頭痛発作につながっている可能性があります。

大切なのは、

① 頭痛日記で自分のトリガーを知る
② 睡眠・食事など生活リズムを整える
③ 適切な急性期治療を行う
④ 頻回なら予防治療を検討する

ことです。

また、いつもと違う頭痛や突然の激しい頭痛では、天候のせいと決めつけず、二次性頭痛を除外することが重要です。

大阪市・東大阪市・八尾市で、台風や低気圧のたびに頭痛を繰り返している方は、頭痛外来で一度ご相談ください。

 

参考文献

国内

  1. 日本頭痛学会.頭痛の診療ガイドライン2021
  2. 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会.頭痛の診療ガイドライン2021
  3. 佐藤純.気象変化と痛み・気象病に関する研究
  4. 日本頭痛学会.片頭痛に関する診療情報
  5. 日本内科学会.片頭痛の診断・治療に関する総説

海外

  1. Headache Classification Committee of the International Headache Society. The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition. Cephalalgia. 2018.
  2. Kelman L. The triggers or precipitants of the acute migraine attack. Cephalalgia. 2007;27:394-402.
  3. Hoffmann J, et al. The influence of weather on migraine – are migraine attacks predictable? Ann Clin Transl Neurol. 2015.
  4. Mukamal KJ, et al. Weather and air pollution as triggers of severe headaches. Neurology. 2009.
  5. Yang AC, et al. Patients with migraine are right about their perception of temperature as a trigger: time series analysis of headache diary data. J Headache Pain. 2015.

 

執筆 三木 貴徳(みき たかのり)

東大阪みき脳神経外科クリニック 院長

資格

  • 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
  • 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
  • 日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医

所属学会

  • 日本頭痛学会
  • 日本認知症学会

脳卒中・頭痛・認知症などの脳神経疾患を中心に診療しています。