群発頭痛の治療
群発頭痛は「自殺頭痛(Suicide Headache)」と呼ばれるほど激しい痛みを伴う頭痛です。
発作中はじっとしていられず、歩き回ったり頭を抱えたりする患者さんが多く、片頭痛とは症状が大きく異なります。
「身の置き所がなくのたうちまわる痛み」と訴え受診される患者さんが少なくありません。
近年では群発頭痛の病態解明が進み、CGRPや視床下部との関連が明らかとなり、新しい治療法も登場しています。
今回は群発頭痛の診断から最新治療まで、脳神経外科専門医の立場から詳しく解説します。
群発頭痛とは?
群発頭痛は三叉神経・自律神経性頭痛(TACs:Trigeminal Autonomic Cephalalgias)の代表的な疾患です。
特徴は、
- 片側の眼の奥の激痛
- 15~180分持続
- 1日に1~8回程度
- 数週間~数か月続く(群発期)
- その後数か月~数年は発作がない(寛解期)
という周期性です。
約85~90%は反復性群発頭痛、約10~15%は慢性群発頭痛とされています。
群発頭痛の症状
頭痛と同じ側に
- 流涙
- 結膜充血
- 鼻づまり
- 鼻水
- 額や顔面の発汗
- 縮瞳
- 眼瞼下垂
などの自律神経症状を伴います。
また、
- 夜間睡眠中
- 明け方
- 毎日ほぼ同じ時間
に起こることが多いことも特徴です。
なぜ群発頭痛が起こるの?
現在最も有力なのは、視床下部が発作の起点になるという考え方です。
PET検査では、発作中に視床下部が活性化することが確認されています。
その結果、
視床下部
↓
三叉神経活性化
↓
CGRP放出
↓
血管拡張・神経炎症
↓
激しい頭痛
という流れが起こると考えられています。
CGRPとの関係
群発頭痛発作時には、頸静脈血中の
CGRP濃度が有意に上昇することが報告されています。
酸素吸入やトリプタン治療後にはCGRP濃度が低下することも確認されています。
このことから、群発頭痛でもCGRPは重要な役割を担っています。
MRI検査が必要な理由
群発頭痛と似た症状でも、
- 下垂体腫瘍
- 海綿静脈洞病変
- 内頸動脈解離
- 脳動脈瘤
- 脳腫瘍
などが隠れていることがあります。
初発例や典型的でない症状では、頭痛外来や脳神経外科でMRI検査を行い、危険な二次性頭痛を除外することが重要です。
急性期治療
① 高流量酸素療法
第一選択です。
100%酸素を毎分12~15Lで、約15~20分吸入します。
約70~80%の患者さんで改善すると報告されています。
副作用が少なく、国際ガイドラインでも第一選択です。
② トリプタン製剤
特に有効なのがスマトリプタン皮下注射です。
約10~15分以内に効果が期待できます。
ゾルミトリプタン点鼻薬も有効性が示されています。
一方、通常の内服トリプタンは発作の持続時間が短いため、十分な効果が得られないことがあります。
予防治療
群発期には予防治療が非常に重要です。
ベラパミル
世界的に第一選択です。
有効率は約70%と報告されています。
ただし、徐脈や房室ブロックのリスクがあるため、投与前後の心電図評価が推奨されています。
副腎皮質ステロイド
プレドニゾロンなどを短期間使用し、
ベラパミルが効果を発揮するまでの「つなぎ治療」として用いられます。
炭酸リチウム
慢性群発頭痛では選択肢となります。
血中濃度の管理が必要です。
トピラマート
ベラパミルが使用できない場合や補助治療として使用されることがあります。
CGRP抗体薬による最新治療
エムガルティ(ガルカネズマブ)
群発頭痛に対して最も研究が進んでいるCGRP抗体薬です。
エピソード性群発頭痛
第Ⅲ相試験では、週あたりの発作回数を有意に減少させました。
投与開始1週間以内から効果が認められた患者さんもいます。
慢性群発頭痛
一方で、慢性群発頭痛では有効性を明確に示すことができず、現在も新たな治療法の開発が進められています。
※日本での適応は最新の添付文書や保険適用を確認する必要があります。
神経刺激療法
難治例では
- 大後頭神経刺激療法
- 視床下部深部刺激療法
- 非侵襲的迷走神経刺激(nVNS)
なども研究・実施されています。
特に非侵襲的迷走神経刺激(nVNS)は、一部の国で急性期・予防治療として使用されており、侵襲が少ない治療法として期待されています。
日常生活で気をつけること
群発期には
- 飲酒
- 喫煙
- 睡眠リズムの乱れ
で発作が誘発されやすくなります。
群発期は禁酒をおすすめします。
また、禁煙は長期的な健康だけでなく、頭痛管理の観点からも重要です。
群発頭痛に関するデータ
- 有病率:約0.1%
- 男女比:約3〜4:1(男性に多い)
- 発症年齢:20〜40歳代に多い
- 約85〜90%が反復性群発頭痛
- 約10〜15%が慢性群発頭痛
- 高流量酸素療法の有効率:約70〜80%
- ベラパミルの有効率:約70%
- エピソード性群発頭痛ではガルカネズマブが発作回数を有意に減少させたことが報告されています。
Q&A
Q1. 群発頭痛と片頭痛はどう違いますか?
群発頭痛は片側の眼の奥の激しい痛みが特徴で、流涙や鼻水などの自律神経症状を伴います。
Q2. MRI検査は必要ですか?
初めての群発頭痛や典型的でない症状では、脳腫瘍や血管病変などを除外するためMRI検査をおすすめします。
Q3. 一番効果がある治療は何ですか?
急性期では高流量酸素療法とスマトリプタン皮下注射が第一選択です。
Q4. 群発頭痛は治りますか?
反復性群発頭痛では寛解期があり、発作が出ない期間が続くことがあります。ただし再発することもあるため、頭痛外来での継続的な管理が大切です。
Q5. CGRP抗体薬は使えますか?
エピソード性群発頭痛ではガルカネズマブの有効性が報告されていますが、日本での適応や保険適用は時期によって異なるため、頭痛外来でご相談ください。
参考文献(国内)
- 日本頭痛学会.頭痛の診療ガイドライン2021
- 日本頭痛学会.国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版
- 日本神経学会.慢性頭痛診療ガイドライン
- 日本頭痛学会誌.群発頭痛の診断と治療
- 日本脳神経外科学会.頭痛診療に関する資料
参考文献(海外)
- European Academy of Neurology. Guideline on the Treatment of Cluster Headache.
- Peter J. Goadsby, et al. Cluster Headache. Nature Reviews Disease Primers. 2018.
- Messoud Ashina, et al. Trial of Galcanezumab in Episodic Cluster Headache. New England Journal of Medicine. 2019.
- American Headache Society. Consensus Statement on Cluster Headache Management.
- International Headache Society. International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3).
執筆 三木 貴徳(みき たかのり)
東大阪みき脳神経外科クリニック 院長
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
- 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
- 日本脳神経血管内治療学会 神経血管内治療専門医
所属学会
- 日本頭痛学会
- 日本認知症学会
大阪市・東大阪市・八尾市を中心に、頭痛外来、MRI検査、脳卒中診療、認知症外来、脳ドックに力を入れています。
群発頭痛は適切な診断と治療により症状を大きく軽減できる可能性があります。目の奥の激しい頭痛や、毎日同じ時間帯に繰り返す頭痛でお困りの方は、お気軽に当院の頭痛外来へご相談ください。

