片頭痛の予防治療まとめ

片頭痛の方で、痛み止めを服用し、何とか日常生活を送っている方も少なくありません。

しかし、片頭痛の治療は、頭痛が起こったときに薬を飲むだけではありません。

片頭痛の発作回数や重症度を減らす「予防治療」があります。

近年は従来の内服薬に加え、抗CGRP関連抗体薬や経口CGRP受容体拮抗薬(ゲパント)などが登場し、治療の選択肢が大きく広がっています。

今回は、片頭痛の予防薬の種類、特徴、副作用、選び方について詳しく解説します。

 

1.片頭痛の予防治療とは?

片頭痛の治療には、大きく分けて2種類あります。

① 急性期治療

頭痛が起こったときに、痛みや吐き気などを改善する治療です。

NSAIDs、トリプタン、ラスミジタン、ゲパントなどがあります。

② 予防治療

片頭痛発作が起こる回数や重症度を減らし、日常生活への影響を軽減する治療です。

予防治療の目的は、単に頭痛を減らすことだけではありません。

  • 頭痛の頻度を減らす
  • 頭痛の程度を軽くする
  • 頭痛が続く時間を短くする
  • 急性期治療薬の使用回数を減らす
  • 仕事や家事、学校生活への支障を減らす
  • 生活の質(QOL)を改善する

といった効果を目指します。

2.どんな人が片頭痛の予防治療を受けた方がよい?

一般的には、次のような場合に予防治療を検討します。

  • 月に2回以上、片頭痛発作がある
  • 月に4日以上、頭痛がある
  • 頭痛によって仕事や家事を休むことがある
  • 頭痛が強く、寝込んでしまう
  • 急性期治療薬の効果が不十分
  • 痛み止めの使用回数が増えている
  • 頭痛によって日常生活に大きな支障がある

ただし、予防治療の必要性は頭痛の回数だけで決まるものではありません。

例えば月2回の片頭痛でも、毎回激しい吐き気を伴い、仕事を休まなければならない場合には予防治療を検討する価値があります。

反対に、頭痛が比較的軽く、急性期治療で十分に対応できている場合には、必ずしも予防薬が必要とは限りません。

3.片頭痛の予防薬は、大きく次のように分類できます。

4.ロメリジン(ミグシス・テラナス)

従来から使われている片頭痛予防薬

ロメリジンはカルシウム拮抗薬に分類される薬剤です。

片頭痛の予防治療に使用される代表的な内服薬の一つです。

特徴

  • 片頭痛予防に対する国内の承認がある
  • 内服で治療できる
  • 比較的長い使用経験がある

主な副作用

  • 眠気
  • めまい
  • ふらつき
  • ほてり

などがあります。

比較的使いやすい薬剤ですが、効果には個人差があります。

5.プロプラノロール(インデラル)

血圧や脈拍にも作用する予防薬

プロプラノロールはβ遮断薬に分類される薬剤です。

片頭痛の予防効果が認められており、国内でも片頭痛発作の発症抑制に使用されます。

特徴

  • 片頭痛予防のエビデンスがある
  • 頻脈などを伴う患者さんでは選択肢になり得る
  • 内服で治療できる

主な副作用

  • 徐脈
  • 低血圧
  • 倦怠感
  • 手足の冷え

などがあります。

特に気管支喘息のある方や、脈拍が遅い方などでは使用できない場合があります。

6.バルプロ酸(デパケンなど)

神経の興奮性を調整する薬剤

バルプロ酸は抗てんかん薬として知られていますが、片頭痛の予防にも使用されます。

神経の興奮性を調整することで、片頭痛発作を起こりにくくすると考えられています。

主な副作用

  • 眠気
  • 体重増加
  • 振戦
  • 肝機能障害

などがあります。

特に注意が必要なのは妊娠への影響です。

バルプロ酸は胎児への重大な影響があるため、妊娠中や妊娠の可能性がある方では原則として避けるべき薬剤です。

妊娠を希望している方は、必ず医師に相談してください。

7.アミトリプチリン(トリプタノール)

睡眠の問題などを伴う患者さんで検討される薬剤

アミトリプチリンは三環系抗うつ薬ですが、片頭痛の予防治療にも使用されます。

特徴

片頭痛に加えて、

  • 不眠
  • 慢性的な痛み
  • 緊張型頭痛の合併

などがある場合に検討されることがあります。

主な副作用

  • 眠気
  • 口の渇き
  • 便秘
  • 体重増加
  • 立ちくらみ

などがあります。

特に高齢者では抗コリン作用や転倒リスクに注意が必要です。

なお、国内では片頭痛予防に対する承認適応と保険上の取扱いを区別して確認する必要があります。

8.トピラマート・カンデサルタン

患者さんの背景に応じて選択する薬剤

トピラマート

海外では片頭痛予防薬として使用され、予防効果のエビデンスがあります。

ただし、日本では片頭痛予防に対する承認適応はありません。

主な注意点は、しびれ、食欲低下、体重減少、集中力低下、認知機能への影響、尿路結石などです。妊娠に関連する重大なリスクにも注意が必要です。

カンデサルタン

高血圧治療薬のARBに分類され、片頭痛予防効果を示した研究があります。

高血圧を合併する患者さんでは選択肢になる場合がありますが、日本では片頭痛予防としては適応外使用です。

低血圧、腎機能、カリウム値、妊娠の可能性などを確認する必要があります。

9.新しい片頭痛予防薬「抗CGRP関連抗体薬」

近年、片頭痛治療で大きな進歩があったのが、CGRPを標的とする予防薬の登場です。

CGRPは、片頭痛の発症に深く関係する神経ペプチドです。

抗CGRP関連抗体薬は、このCGRPまたはCGRP受容体の働きを抑えることで片頭痛を予防します。

日本で使用されている代表的な注射薬は次の3種類です。

① エムガルティ(ガルカネズマブ)

CGRPそのものに結合する抗体薬です。

初回に負荷投与を行い、その後は通常4週間ごとに皮下注射します。

② アジョビ(フレマネズマブ)

CGRPに結合する抗体薬です。

通常4週間ごと、または12週間ごとの投与方法があります。

③ アイモビーグ(エレヌマブ)

CGRP受容体に作用する抗体薬です。

通常4週間ごとに皮下注射します。

抗CGRP関連抗体薬のメリット

  • 片頭痛の発作回数を減らす効果が期待できる
  • 従来の予防薬で効果不十分な患者さんにも選択肢となる
  • 毎日内服する必要がない
  • 従来の一部の薬剤と比べ、眠気などの副作用が少ない傾向がある

注意点

注射部位の痛みや発赤、便秘、過敏症などに注意が必要です。

また、費用や使用条件、妊娠・授乳、心血管疾患の既往なども考慮します。

2026年の日本頭痛学会のポジションステートメントでは、抗CGRP関連抗体薬を成人片頭痛予防の第一選択薬に含めることが推奨されています。

これは、従来の内服薬が必ず無効になってからでなければ検討できない、という考え方からの重要な変化です。

ただし、実際の処方では国内の最適使用推進ガイドラインや保険診療上の条件を確認する必要があります。

10.飲むCGRP関連薬「ゲパント」

注射薬だけでなく、内服でCGRPの働きを抑える治療も登場しています。

代表的な薬剤がリメゲパント(ナルティーク)です。

リメゲパントは、片頭痛の急性期治療と予防治療の両方に使用できる薬剤です。

予防治療では、通常、隔日投与という方法が用いられます。

特徴

  • 内服薬である
  • CGRP受容体を阻害する
  • 注射が苦手な患者さんにも選択肢となる
  • 急性期治療にも使用される成分である

ただし、急性期治療と予防治療では用法が異なります。

肝機能、腎機能、併用薬との相互作用、妊娠・授乳などにも注意が必要です。

また、アトゲパントなどの新しい経口CGRP関連薬についても、日本頭痛学会による診療指針の整備が進んでいます。

実際に使用できる製剤や適応、処方条件については、診療時点の最新情報を確認する必要があります。

11.あなたに合った片頭痛予防薬は?

片頭痛の予防薬には、それぞれ異なる特徴があります。

どの薬が適しているかは、頭痛の回数だけでなく、年齢、持病、生活習慣、妊娠の希望、費用などによって変わります。

12.片頭痛予防薬はどれくらい効く?

予防治療では、一般的に頭痛日数や片頭痛日数が50%以上減少することが一つの治療目標になります。

例えば、月に8日あった片頭痛が月4日程度に減れば、治療効果があったと評価できます。

ただし、50%減少しなくても、

  • 頭痛が軽くなった
  • 寝込む日が減った
  • 痛み止めの使用回数が減った
  • 仕事を休まなくなった

など、生活への支障が改善していれば、治療を継続する価値があります。

効果判定はいつ行う?

従来の内服薬では、通常、少量から開始して徐々に調整し、数週間から数か月かけて効果を評価します。

CGRP関連薬についても、薬剤ごとの評価時期に従い、一般的には約3か月を一つの目安として治療効果を確認します。

効果が不十分な場合には、用量調整、薬剤変更、併用療法などを検討します。

13.予防薬はいつまで飲み続ける?

予防薬は必ずしも一生続けるものではありません。

頭痛が十分に改善し、安定した状態が続いた場合には、減量や中止を検討することがあります。

ただし、薬剤によって中止方法が異なり、急に中止すると問題が生じるものもあります。

自己判断で中止せず、頭痛日記を参考に医師と相談しましょう。

14.予防薬と一緒に大切な生活習慣

片頭痛の予防には、薬物治療だけでなく生活習慣も重要です。

特に、

  • 規則正しい睡眠
  • 食事を抜かない
  • 適切な水分摂取
  • 適度な有酸素運動
  • ストレス管理
  • 頭痛日記の記録

などが役立ちます。

また、急性期治療薬の使用が増えすぎると、薬剤の使用過多による頭痛につながる場合があります。

予防治療によって頭痛の回数を減らすことは、急性期治療薬の使用頻度を減らすうえでも重要です。

15.よくある質問(Q&A)

Q1.月に何回片頭痛があれば予防薬が必要ですか?

月2回以上の片頭痛発作や、月4日以上の頭痛などが検討の目安になります。ただし、頻度が少なくても生活への支障が大きければ予防治療を検討します。

Q2.片頭痛の予防薬は毎日飲む必要がありますか?

従来の内服薬では毎日服用するものが多いですが、抗CGRP関連抗体薬は通常4週間ごとなどの注射で治療できます。経口ゲパントには隔日投与などの方法もあります。

Q3.CGRP製剤は従来の薬より効果がありますか?

CGRP関連薬は片頭痛予防に有効で、従来の薬剤で効果不十分な方にも選択肢となります。ただし、すべての患者さんに最も効果が高いとは限りません。

Q4.片頭痛予防薬には副作用がありますか?

あります。眠気、めまい、体重変化、便秘、注射部位反応など、薬剤によって異なります。持病や併用薬を確認しながら選択することが大切です。

Q5.片頭痛の予防薬で完全に頭痛がなくなりますか?

頭痛がほとんどなくなる患者さんもいますが、すべての方で完全に消失するわけではありません。頭痛日数や重症度を減らし、生活の質を改善することが大きな目標です。

Q6.妊娠中でも片頭痛予防薬を使えますか?

妊娠中や妊娠を希望する場合には、使用できる薬剤が大きく制限されます。特にバルプロ酸やトピラマートなどは重大なリスクがあるため注意が必要です。妊娠前から主治医と治療計画を相談してください。

まとめ|あなたに合った片頭痛予防薬を見つけましょう

片頭痛の予防治療は、この数年で大きく進歩しました。

従来の内服薬に加え、抗CGRP関連抗体薬や経口CGRP受容体拮抗薬など、新しい選択肢が増えています。

しかし、「一番新しい薬が、すべての患者さんに一番合う薬」とは限りません。

大切なのは、

① 頭痛の頻度と重症度を把握する
② 生活への支障を評価する
③ 持病や生活スタイルに合った薬を選ぶ
④ 治療効果と副作用を確認する
⑤ 必要に応じて治療を見直す

ことです。

「片頭痛だから仕方ない」

「痛み止めを飲んで我慢するしかない」

と諦める必要はありません。

東大阪みき脳神経外科クリニックでは、頭痛外来において片頭痛の診断・急性期治療・予防治療を行っています。

大阪市・東大阪市・八尾市で繰り返す片頭痛にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

あなたに合った片頭痛予防薬を、一緒に見つけていきましょう。

 

参考文献

  1. 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会.頭痛の診療ガイドライン2021.
  2. 日本頭痛学会.CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版).
  3. 日本頭痛学会理事会・ガイドライン委員会.成人の片頭痛予防療法におけるCGRP関連抗体薬の使用に関するポジションステートメント.日本頭痛学会誌.2026;52(3):493–497.
  4. Ailani J, et al. Calcitonin gene-related peptide-targeting therapies are a first-line option for the prevention of migraine: An American Headache Society position statement update. Headache. 2024.
  5. Silberstein SD. Preventive Migraine Treatment. Continuum. 2015.

 

執筆 三木 貴徳(みき たかのり)
東大阪みき脳神経外科クリニック 院長

資格

  • 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
  • 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
  • 日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医

所属学会

  • 日本頭痛学会
  • 日本認知症学会

脳卒中・頭痛・認知症などの脳神経疾患を中心に診療しています。