脳動脈瘤に対する治療について
「脳ドックで脳動脈瘤が見つかった」
「MRI検査で脳動脈瘤を指摘された」
「開頭手術と血管内治療はどちらが良いの?」
このようなお悩みで、脳神経外科を受診される患者さんは少なくありません。
脳動脈瘤は破裂すると「くも膜下出血」を引き起こし、命に関わることがあります。
近年ではMRIや脳ドックの普及により、破裂前の脳動脈瘤が発見される機会が増えています。
今回は、脳神経外科で行う脳動脈瘤治療について、開頭術(クリッピング術)、血管内治療、そして最新治療までわかりやすく解説します。
脳動脈瘤とは?
脳動脈瘤とは、脳の血管の一部が風船のように膨らんだ状態です。
日本では成人の約3〜5%に未破裂脳動脈瘤が存在すると報告されています。
多くは無症状ですが、頭痛、脳神経麻痺、視力障害などをきっかけに見つかることがあります。
また、脳ドックやMRI検査で偶然発見されるケースも増えています。
脳動脈瘤が破裂するとどうなる?
脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を発症します。
代表的な症状は、突然の激しい頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害です。
くも膜下出血は死亡率が高く、社会復帰できない患者さんも少なくありません。
そのため脳神経外科では、破裂前に治療するかどうかを慎重に判断します。
MRI・MRA検査の重要性
脳神経外科では、MRI、MRA、CT、CTAなどを用いて脳動脈瘤を評価します。
特にMRAは造影剤を使用せずに脳血管を観察できるため、脳ドックでも広く利用されています。
脳ドックを受けた患者さんから、「MRIで脳動脈瘤を指摘された」という相談は非常に増えています。
治療が必要な脳動脈瘤とは?
すべての脳動脈瘤が治療対象になるわけではありません。
脳神経外科では、
- 動脈瘤サイズ
- 形状
- 部位
- 年齢
- 家族歴
- 高血圧
などを総合的に判断します。
一般的には、
- 5〜7mm以上
- 不整形
- 増大傾向
などの場合に治療が検討されます。
開頭クリッピング術とは?
開頭クリッピング術は、脳神経外科で長年行われてきた標準治療です。
頭蓋骨を開き、
脳動脈瘤の根元(ネック)をチタン製クリップで閉鎖します。
開頭クリッピング術のメリット
- 再発率が低い
- 長期成績が良好
- 完全閉塞率が高い
デメリット
- 開頭が必要
- 入院期間が長い
- 身体への負担が大きい
血管内治療(コイル塞栓術)とは?
血管内治療は近年急速に普及した治療法です。
足の付け根や手首の血管からカテーテルを挿入し、
脳動脈瘤内にプラチナコイルを詰めて血流を遮断します。
メリット
- 開頭不要
- 傷が小さい
- 回復が早い
- 高齢者にも適応しやすい
デメリット
- 再発の可能性
- 定期的MRI・MRAフォローが必要
フローダイバーター治療とは?
近年の脳神経外科領域で最も大きな進歩の一つです。
フローダイバーターは、
脳動脈瘤の親血管に特殊なステントを留置し、
動脈瘤への血流を減少させる治療です。
適応
- 大型脳動脈瘤
- 巨大脳動脈瘤
- ワイドネック動脈瘤
など
従来治療が難しかった症例にも適応可能です。
ステントアシストコイル塞栓術
従来のコイル治療では難しかった
- 広頚動脈瘤
- 複雑形状動脈瘤
に対して行われます。
ステントを併用することでコイルの安定性が向上します。
脳動脈瘤治療の最新データ
日本未破裂脳動脈瘤悉皆調査(UCAS Japan)では、
- 5mm未満の年間破裂率:約0.3〜0.5%
- 7〜9mm:約1%前後
- 10mm以上:約1〜3%以上
と報告されています。
また、成人の約3〜5%に未破裂脳動脈瘤が存在するとされています。
脳動脈瘤は破裂するまで症状がないことも少なくありません。
そのため、高血圧、喫煙歴、家族歴、脳卒中家系の方は脳ドックやMRI検査をおすすめします。
Q&A
Q1. 脳動脈瘤が見つかったら必ず手術ですか?
いいえ。
大きさや形状によってはMRI・MRAで経過観察します。
Q2. MRIで脳動脈瘤はわかりますか?
はい。
MRA検査で多くの脳動脈瘤を発見できます。
Q3. 開頭術と血管内治療はどちらが良いですか?
動脈瘤の部位や形状によって異なります。
脳神経外科専門医による評価が重要です。
Q4. フローダイバーターとは何ですか?
大型・巨大脳動脈瘤に対する最新の血管内治療です。
Q5. 脳ドックは受けた方がいいですか?
高血圧、喫煙歴、家族歴のある方は脳ドックをおすすめします。
参考文献(国内)
- UCAS Japan Investigators. 日本未破裂脳動脈瘤悉皆調査(UCAS Japan)
- 日本脳卒中学会 脳卒中治療ガイドライン2021
- 日本脳神経外科学会 脳動脈瘤診療指針
- 日本脳神経血管内治療学会 ガイドライン
- 日本脳ドック学会 脳ドックガイドライン2024
参考文献(海外)
- ISUIA Investigators. Unruptured Intracranial Aneurysms Study.
- Molyneux AJ, et al. International Subarachnoid Aneurysm Trial (ISAT). Lancet.
- Fiorella D, et al. Pipeline Embolization Device for Intracranial Aneurysms.
- Lawton MT, Vates GE. Subarachnoid Hemorrhage. N Engl J Med.
- American Heart Association/American Stroke Association Guidelines for Management of Unruptured Intracranial Aneurysms.
執筆 三木 貴徳(みき たかのり)
東大阪みき脳神経外科クリニック 院長
日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
日本脳卒中学会 脳卒中専門医
日本脳神経血管内治療学会 神経血管内治療専門医
脳動脈瘤、脳卒中、認知症、頭痛外来、MRI検査、脳ドック診療に力を入れています。
大阪市・東大阪市・八尾市を中心に地域医療に貢献しています。
東大阪みき脳神経外科クリニック

