片頭痛の原因、最新治療
「片頭痛の原因は何ですか?」
「CGRP製剤をすすめられたけれど、どんな薬ですか?」
「頭痛外来で最新治療が受けられると聞いた」
近年、片頭痛治療は大きく進歩しています。
その中心にあるのが、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)です。
CGRPは片頭痛の発症に深く関与する物質であり、近年の研究によってその役割が明らかになりました。
現在ではCGRPを標的とした治療薬が登場し、多くの片頭痛患者さんの生活の質(QOL)改善に貢献しています。
大阪市・東大阪市・八尾市の頭痛外来でも、
- エムガルティ
- アジョビ
- アイモビーグ
- アクイプタ
- ナルティーク
などのCGRP関連治療薬についてのご相談が増えています。
今回は、片頭痛の原因物質であるCGRPについて、MRI検査の重要性も含めて脳神経外科専門医がわかりやすく解説します。
CGRPとは?
CGRP(Calcitonin Gene-Related Peptide)は神経から放出されるペプチド(神経伝達物質)の一種です。
主に、
- 三叉神経
- 脳血管周囲
- 中枢神経系
に存在しています。
片頭痛発作時には、このCGRPが大量に放出されることがわかっています。
CGRPはなぜ頭痛を起こすの?
CGRPには以下の作用があります。
① 血管拡張作用
脳血管を拡張させることで、拍動性のズキズキした痛みを引き起こします。
② 神経原性炎症
血管周囲の炎症反応を誘発します。
③ 痛みの増幅
脳が痛みに敏感になる「中枢性感作」を引き起こします。
④ 感覚過敏
- 光過敏
- 音過敏
- 臭い過敏
にも関与しています。
CGRPが片頭痛の原因物質と考えられる理由
研究では、片頭痛発作中の患者さんで血液中のCGRP濃度が上昇することが確認されています。
さらに、CGRPを静脈投与すると、片頭痛患者さんの約60〜70%で片頭痛発作が誘発されることが報告されています。
これが現在のCGRP関連治療薬開発の大きな根拠となっています。
日本にはどれくらい片頭痛患者がいる?
日本の片頭痛患者数は、約840万人と推定されています。
また、
- 女性:約12%
- 男性:約4%
が片頭痛を有すると報告されています。
しかし、
- 約70%が医療機関未受診
- 約80%が市販薬のみで対応
しているとされています。
我慢していた頭痛」で受診される患者さんが多くいらっしゃいます。
片頭痛は生活にどれくらい影響する?
片頭痛患者さんでは、
- 約74%が仕事や家事に支障
- 約50%が欠勤や早退を経験
- 約80%が発作への不安を抱えている
と報告されています。
頭痛外来では、
- HIT-6
- MIBS-4
などを用いて生活への影響も評価します。
CGRP関連治療薬とは?
現在日本で使用できる主なCGRP関連薬は以下の通りです。
注射薬
エムガルティ(ガルカネズマブ)
CGRPに直接結合する抗体製剤
月1回皮下注射
アジョビ(フレマネズマブ)
CGRPに直接結合
月1回または3か月ごと投与
アイモビーグ(エレヌマブ)
CGRP受容体に作用
月1回皮下注射
内服薬
アクイプタ(アトゲパント)
CGRP受容体拮抗薬
予防治療として使用
ナルティーク(リメゲパント)
急性期治療と予防治療の両方で使用可能
各治療薬の臨床試験データ
エムガルティ(EVOLVE試験)
月間片頭痛日数
- 治療前:約9日
- 約4〜5日減少
50%以上改善率約60%
アジョビ(HALO試験)
慢性片頭痛患者で、月間頭痛日数約4.3〜5.0日減少
アイモビーグ(STRIVE試験)
50%以上改善率約43〜50%
アクイプタ(ADVANCE試験)
月間片頭痛日数約3.7〜4.2日減少
ナルティーク
予防効果に加え、
- 光過敏
- 音過敏
- 臭い過敏
など感覚過敏症状の改善も期待されています。
HIT-6・MIBS-4も改善
CGRP関連薬では、HIT-6平均5〜10点改善、MIBS-4有意な改善が報告されています。
つまり、頭痛回数だけでなく、仕事・家事・学校生活への支障も改善する可能性があります。
MRI検査が重要な理由
片頭痛患者さんの多くはMRIで異常がありません。
しかし、
- 脳腫瘍
- 脳動脈瘤
- 脳卒中
- 脳静脈洞血栓症
- RCVS
など危険な病気が隠れていることがあります。
頭痛外来や脳神経外科では、CGRP関連薬を開始する前にMRI検査を行うこともあります。
頭痛外来で予防治療を考える目安
以下に当てはまる場合は予防治療を検討します。
- 月4日以上の片頭痛
- HIT-6が60点以上
- MIBS-4高値
- 市販薬を月10日以上使用
- MRI検査で危険な頭痛が否定されている
Q&A
Q1. CGRPとは何ですか?
片頭痛発作時に放出される神経伝達物質です。
Q2. CGRPが増えるとどうなりますか?
血管拡張や炎症によって片頭痛が起こります。
Q3. MRI検査は必要ですか?
危険な頭痛を除外するために重要です。
Q4. CGRP関連薬は誰でも使えますか?
主に片頭痛患者さんが対象です。
頭痛外来で適応を判断します。
Q5. ナルティークとアクイプタの違いは?
ナルティークは急性期治療と予防治療、アクイプタは予防治療が中心です。
参考文献(国内)
- 日本頭痛学会. 頭痛の診療ガイドライン2021
- 日本頭痛学会. CGRP関連治療薬適正使用指針
- 日本神経学会. 慢性頭痛診療ガイドライン
- 日本頭痛学会誌. CGRPと片頭痛
- 日本神経治療学会. 頭痛診療指針
参考文献(海外)
- Goadsby PJ, et al. Migraine. Nat Rev Dis Primers. 2017.
- Edvinsson L. The CGRP Pathway in Migraine. Lancet Neurol. 2018.
- Dodick DW, et al. Trial of Galcanezumab in Prevention of Episodic Migraine. N Engl J Med. 2018.
- Lipton RB, et al. Fremanezumab for the Preventive Treatment of Chronic Migraine. N Engl J Med. 2017.
- American Headache Society Consensus Statement on CGRP-Targeting Therapies. Headache. 2024.
執筆 三木 貴徳(みき たかのり)
東大阪みき脳神経外科クリニック 院長
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
- 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
- 日本脳神経血管内治療学会 神経血管内治療専門医
所属学会
- 日本頭痛学会
- 日本認知症学会
大阪市・東大阪市・八尾市を中心に、頭痛外来、MRI検査、脳卒中診療、認知症外来、脳ドックに力を入れています。
東大阪みき脳神経外科クリニック

