頭痛のレッドフラッグ
「いつもの頭痛だから大丈夫」
「頭痛薬を飲めば治るから様子を見よう」
このように考えてしまう方は少なくありません。
しかし、頭痛の中には脳卒中、くも膜下出血、脳腫瘍、脳静脈洞血栓症、髄膜炎など、命に関わる病気が隠れていることがあります。
頭痛外来や脳神経外科では、危険な頭痛(二次性頭痛)を見逃さないために、「SNOOP10」という国際的なチェックリストを活用しています。
大阪市・東大阪市・八尾市の頭痛外来でも、SNOOP10を参考に問診を行い、必要に応じてMRI検査や追加検査を実施しています。
今回は、危険な頭痛を見逃さないための重要なキーワード「SNOOP10」について解説します。
SNOOP10とは?
SNOOP10は、二次性頭痛(原因となる病気がある頭痛)を疑うべき危険なサインをまとめたチェックリストです。
国際頭痛分類(ICHD-3)や米国頭痛学会などでも重要視されており、頭痛診療の現場で広く活用されています。
S:Systemic symptoms(全身症状・全身疾患)
次のような症状がある場合は注意が必要です。
- 発熱
- 体重減少
- 強い倦怠感
- がんの既往
- HIV感染
- 免疫抑制状態
考えられる病気
- 髄膜炎
- 脳炎
- 脳膿瘍
- 悪性腫瘍の転移
N:Neurological symptoms(神経症状)
頭痛に加えて、
- 手足のしびれ
- 麻痺
- ろれつが回らない
- 意識障害
- けいれん
- 視力障害
がある場合は緊急性が高くなります。
考えられる病気
- 脳梗塞
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 脳静脈洞血栓症
O:Onset(突然発症)
「今まで経験したことのない激しい頭痛」
数秒〜1分以内にピークとなる頭痛は雷鳴頭痛(Thunderclap Headache)と呼ばれます。
考えられる病気
- くも膜下出血
- 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)
- 脳静脈洞血栓症
- 頸動脈・椎骨動脈解離
O:Older age(50歳以降の新しい頭痛)
50歳を過ぎて初めて頭痛が出現した場合は注意が必要です。
考えられる病気
- 側頭動脈炎
- 脳腫瘍
- 慢性硬膜下血腫
- 脳血管障害
P:Pattern change(頭痛パターンの変化)
今までの頭痛と違う場合は危険なサインです。
例えば、
- 頻度が増えた
- 強さが増した
- 性質が変わった
- 頭痛薬が効かなくなった
などです。
SNOOP10で追加された10項目
① Positional headache(体位で変わる頭痛)
立つと悪化・横になると改善する頭痛では、
- 低髄液圧症候群
横になると悪化する場合は、
- 頭蓋内圧亢進
などを疑います。
② Precipitated by Valsalva(咳・いきみ・運動で悪化)
- 咳
- 排便時
- 重い物を持つ
- 筋トレ
で悪化する頭痛では、
- キアリ奇形
- 脳腫瘍
- 脳動脈瘤
- 一次性運動時頭痛
などが考えられます。
③ Papilledema(うっ血乳頭)
眼底検査でうっ血乳頭があれば、
頭蓋内圧亢進を疑います。
④ Progressive headache(徐々に悪化)
数週間〜数か月かけて悪化する頭痛では、
- 脳腫瘍
- 慢性硬膜下血腫
- 正常圧水頭症
などを考えます。
⑤ Pregnancy・産後
妊娠中や産後の頭痛では、
- 妊娠高血圧症候群
- 子癇
- 脳静脈洞血栓症
- RCVS
などを除外する必要があります。
⑥ Painful eye(眼の痛み)
眼痛を伴う頭痛では、
- 急性閉塞隅角緑内障
- 視神経炎
などを考えます。
⑦ Post-traumatic headache(頭部外傷後)
頭部外傷後の頭痛では、
- 慢性硬膜下血腫
- 脳挫傷
- 頭蓋骨骨折
などを確認します。
⑧ Pathology of the immune system(免疫異常)
免疫抑制状態では、
感染症や悪性リンパ腫などのリスクが高まります。
⑨ Painkiller overuse(薬剤の使用過多)
痛み止めを頻繁に服用している場合は、
薬剤の使用過多による頭痛(MOH)
も考えます。
⑩ Previous headache history differs(今までと違う頭痛)
片頭痛がある方でも、
「いつもと違う」
という場合にはMRI検査が重要です。
MRI検査が必要な理由
SNOOP10のいずれかに該当する場合は、MRI検査をおすすめすることがあります。
MRI検査では、
- 脳腫瘍
- 脳動脈瘤
- 脳梗塞
- 脳出血
- 脳静脈洞血栓症
- RCVS
- 慢性硬膜下血腫
- 水頭症
などを詳しく調べることができます。
当院では院内MRIを活用し、必要に応じて迅速な検査・診断を行っています。
頭痛外来を受診した方がよい症状
次のような頭痛がある場合は、早めの受診をおすすめします。
- 突然始まった激しい頭痛
- 今まで経験したことのない頭痛
- 頭痛が徐々に悪化している
- 発熱や意識障害を伴う頭痛
- 手足のしびれや麻痺を伴う頭痛
- 妊娠中・産後の頭痛
- 頭部外傷後の頭痛
- 頭痛薬が効かなくなった頭痛
SNOOP10に関するデータ
- 頭痛患者の約90%は片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛です。
- 約5〜10%は二次性頭痛とされ、原因疾患の検索が必要です。
- 救急外来で「突然の激しい頭痛」を訴えた患者さんの約10〜15%にくも膜下出血が認められると報告されています。
- くも膜下出血の約50%は「人生最悪の頭痛」と表現されます。
- SNOOP10は国際的に推奨されている二次性頭痛スクリーニングツールです。
Q&A
Q1. SNOOP10とは何ですか?
危険な頭痛(二次性頭痛)を見逃さないためのチェックリストです。
Q2. SNOOP10に当てはまると必ず重い病気ですか?
必ずではありませんが、詳しい診察やMRI検査が必要になることがあります。
Q3. MRI検査はどんな時に必要ですか?
SNOOP10の項目に当てはまる場合や、診察で危険な頭痛が疑われる場合に行います。
Q4. 片頭痛でもMRI検査は必要ですか?
典型的な片頭痛では必ずしも必要ではありませんが、「いつもと違う頭痛」ではMRI検査を検討します。
Q5. 頭痛外来ではどのような診察を行いますか?
詳しい問診、神経学的診察、必要に応じたMRI検査を組み合わせ、一次性頭痛と二次性頭痛を見極めます。
参考文献(国内)
- 日本頭痛学会.頭痛の診療ガイドライン2021
- 日本神経学会.慢性頭痛診療ガイドライン
- 日本頭痛学会.国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版
- 日本脳卒中学会.脳卒中治療ガイドライン2021
- 日本神経救急学会.神経救急診療指針
参考文献(海外)
- International Headache Society. International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3).
- Stephen D. Silberstein, et al. Red and Orange Flags for Secondary Headaches in Clinical Practice. Headache. 2018.
- American Headache Society. Secondary Headache Red Flags.
- Peter J. Goadsby, et al. Migraine. Nature Reviews Disease Primers. 2017.
- European Academy of Neurology. Guideline on Secondary Headaches.
執筆 三木 貴徳(みき たかのり)
東大阪みき脳神経外科クリニック 院長
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
- 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
- 日本脳神経血管内治療学会 神経血管内治療専門医
所属学会
- 日本頭痛学会
- 日本認知症学会
大阪市・東大阪市・八尾市を中心に、頭痛外来、MRI検査、脳卒中診療、認知症外来、脳ドックに力を入れています。
「いつもの頭痛と違う」「急に始まった強い頭痛」「不安な症状を伴う頭痛」がある場合は、自己判断せず、お早めに当院の頭痛外来へご相談ください。

