片頭痛の予兆と前兆

「頭痛が始まる前に眠くなり、あくびがでる」
「キラキラした光が見えてから頭痛が始まる」
「頭痛が来る前にイライラして、甘いものが食べたくなる」

片頭痛には、頭痛が始まる前に現れる「予兆(Premonitory symptoms)」と「前兆(Aura)」があります。

この2つは混同されることが多いですが、実際には発生するメカニズムも症状も異なります。

今回は、片頭痛の予兆と前兆の違い、最新のメカニズム、MRI検査が必要なケース、治療について詳しく解説します。

 

片頭痛は4つの段階で起こる

現在では片頭痛は次の4段階で進行すると考えられています。

① 予兆期(Premonitory phase)

② 前兆期(Aura:ある人のみ)

③ 頭痛期

④ 回復期(Postdrome)

すべての患者さんに前兆があるわけではありません。

一方、予兆は約60~80%の患者さんにみられると報告されています。

 

予兆とは?

予兆とは、頭痛が始まる数時間から1~2日前に現れる症状です。

代表的な症状

  • あくびが増える
  • 強い眠気
  • 疲れやすい
  • 首や肩のこり
  • 集中力低下
  • 気分の落ち込み
  • イライラ
  • 甘いものが食べたくなる
  • 水分を多く飲みたくなる
  • 頻尿

患者さんの約60~80%に認められるとされています。

 

予兆はなぜ起こる?

近年のMRIやPET研究では、視床下部(Hypothalamus)が頭痛発作の数時間前から活動していることがわかっています。

視床下部は、

  • 睡眠
  • 食欲
  • 体温
  • ホルモン
  • 自律神経

を調節する部位です。

そのため、

  • あくび
  • 空腹感
  • 眠気
  • 頻尿

などが起こると考えられています。

fMRI研究では、頭痛発作24~48時間前から視床下部と三叉神経系の結合が変化することも報告されています。

 

前兆(Aura)とは?

前兆は、頭痛が始まる5~60分前に出現する神経症状です。

約20~30%の片頭痛患者さんにみられます。

視覚性前兆(最も多い)

約90%を占めます。

代表的な症状

  • キラキラした光(閃輝暗点)
  • ギザギザ模様
  • 視野が欠ける
  • 光の波が広がる

感覚性前兆

  • 手のしびれ
  • 顔のしびれ
  • 舌のしびれ

言語性前兆

  • 言葉が出にくい
  • 話しにくい
  • 言い間違える

その他

まれに

  • めまい
  • 複視
  • 脱力

などを認めることがあります。

 

前兆はなぜ起こる?

現在最も有力なのが、大脳皮質拡延性脱分極(Cortical Spreading Depression:CSD)です。

脳の表面をゆっくり電気活動の波が広がり、その後、一時的に神経活動が低下します。

この波が後頭葉を通ることで、視覚症状(閃輝暗点)が起こります。

その後、三叉神経が刺激され、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が放出され、片頭痛発作へ進行します。

 

CGRPとの関係

CSDにより三叉神経が活性化されると、CGRPが放出されます。

CGRPは、

  • 血管拡張
  • 神経原性炎症
  • 痛みの増幅

を引き起こし、片頭痛発作を誘発します。

現在の最新治療である

  • エムガルティ
  • アジョビ
  • アイモビーグ
  • アクイプタ
  • ナルティーク

は、このCGRP経路を標的としています。

 

MRI検査が必要なケース

前兆と思っていても、脳卒中や脳腫瘍などが隠れていることがあります。

以下の場合は頭痛外来や脳神経外科でMRI検査をおすすめします。

  • 初めての前兆
  • 50歳以降に初めて出現
  • 前兆が60分以上続く
  • 麻痺が残る
  • 意識障害を伴う
  • 頭痛が急激に始まる
  • いつもと異なる症状

MRIでは、

  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • 脳腫瘍
  • 脳動脈瘤
  • 脳静脈洞血栓症

などを確認します。

 

治療

急性期治療

頭痛が始まったら早めに(15分以内)

  • トリプタン製剤(マクサルト、ゾーミッグ、イミグラン、レルパックス、アマージ)
  • ラスミジタン(レイボー)
  • NSAIDs
  • ナルティーク(リメゲパント)

などを使用します。

※一般的にトリプタン製剤は前兆のみの段階ではなく、頭痛が始まってから使用することが推奨されています。

予防治療

頭痛回数が多い場合は

  • エムガルティ
  • アジョビ
  • アイモビーグ
  • アクイプタ
  • ナルティーク
  • ロメリジン
  • バルプロ酸

などを検討します。

片頭痛の予兆・前兆に関するデータ

  • 日本の片頭痛患者数:約840万人
  • 女性有病率:約12%
  • 男性有病率:約4%
  • 予兆を認める患者:約60~80%
  • 前兆を伴う片頭痛:約20~30%
  • 視覚性前兆:約90%
  • 前兆を伴う片頭痛は虚血性脳卒中リスクが約2倍と報告されています。
  •  

Q&A

Q1. 予兆と前兆は同じですか?

いいえ。

予兆は頭痛の数時間~2日前に現れる全身症状、前兆は頭痛直前に現れる神経症状です。

Q2. 閃輝暗点だけでも受診した方がいいですか?

初めての場合や症状がいつもと違う場合は、頭痛外来や脳神経外科で評価を受けることをおすすめします。

Q3. MRI検査は必要ですか?

危険な病気を除外するため、症状によってはMRI検査が重要です。

Q4. 前兆があると脳卒中になりやすいですか?

前兆を伴う片頭痛では虚血性脳卒中リスクが高いことが報告されています。特に喫煙やエストロゲン含有ピルの使用など他の危険因子がある場合は注意が必要です。

Q5. CGRP治療薬は前兆にも効果がありますか?

主な目的は片頭痛発作の予防ですが、発作回数や生活への影響を減らすことで、結果として前兆を伴う発作の頻度が減少する患者さんもいます。

参考文献(国内)

  1. 日本頭痛学会.頭痛の診療ガイドライン2021
  2. 日本頭痛学会.国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版
  3. 日本神経学会.慢性頭痛診療ガイドライン
  4. 日本頭痛学会誌.片頭痛の病態生理
  5. 日本神経治療学会.頭痛診療指針

参考文献(海外)

  1. International Headache Society. International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3).
  2. Peter J. Goadsby, et al. Migraine. Nature Reviews Disease Primers. 2017.
  3. Arne May. Hypothalamic Activation in Migraine. Nature Reviews Neurology.
  4. Michael A. Moskowitz. The Neurobiology of Migraine. Neuron.
  5. American Headache Society. Consensus Statement on Migraine Prevention.

 

執筆 三木 貴徳(みき たかのり)

東大阪みき脳神経外科クリニック 院長

  • 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
  • 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
  • 日本脳神経血管内治療学会 神経血管内治療専門医

所属学会

  • 日本頭痛学会
  • 日本認知症学会

大阪市・東大阪市・八尾市を中心に、頭痛外来、MRI検査、脳卒中診療、認知症外来、脳ドックに力を入れています。

「頭痛の前にいつもと違う症状が出る」「初めて閃輝暗点が出た」「前兆か脳卒中か判断がつかない」といった場合は、お気軽に当院の頭痛外来へご相談ください。