更年期と頭痛

「40を過ぎて頭痛が増えた」
「月経が不規則になってから片頭痛がひどくなった」
「更年期と片頭痛は関係がありますか?」

このようなご相談は頭痛外来でもよくみられます。

更年期は、女性ホルモンであるエストロゲンが大きく変動しながら低下していく時期です。

このホルモン変化は片頭痛の発症や悪化に深く関係しています。

特に閉経前の数年間はホルモン変動が大きく、もともと片頭痛がある方では、発作回数が増えたり、頭痛が長引いたりすることがあります。

一方で、閉経後にはエストロゲン変動が落ち着くため、片頭痛が改善する方も少なくありません。

今回は、更年期と片頭痛の関係、悪化する理由、治療、MRI検査が必要なケースについて解説します。

 

更年期とは?

更年期とは、一般的に閉経の前後約5年間ずつ、合計約10年間を指します。

日本人女性の平均閉経年齢は50歳前後であるため、おおむね45〜55歳頃が更年期にあたります。

この時期には卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌が不安定になります。

その結果、

  • ホットフラッシュ
  • 発汗
  • 動悸
  • めまい
  • 不眠
  • イライラ
  • 気分の落ち込み
  • 疲労感
  • 頭痛

など、さまざまな症状が現れます。

 

更年期と片頭痛は関係する?

答えはYES、その通り深く関係しています。

片頭痛はもともと女性に多い疾患で、女性ホルモン、特にエストロゲンの変動が発作を誘発する重要な要因の一つと考えられています。

更年期では、エストロゲンが単純に徐々に減るわけではありません。

閉経に向かう途中では、上がったり下がったりを繰り返しながら大きく変動します。

この不安定なホルモン変動によって片頭痛が悪化しやすくなります。

 

なぜエストロゲンが下がると片頭痛が起こる?

片頭痛では、

  • 三叉神経
  • CGRP
  • セロトニン
  • 脳幹
  • 視床下部

などが関係しています。

エストロゲンは、これらの神経系にも影響を与えています。

特に重要なのが、エストロゲンの急激な低下です。

いわゆる「エストロゲン離脱」によって三叉神経血管系が活性化し、CGRPの放出や痛みの伝達が促進され、片頭痛発作につながると考えられています。

これは月経直前に片頭痛が起こりやすくなる「月経関連片頭痛」と同じ考え方です。

 

更年期前後では片頭痛が悪化しやすい

女性の片頭痛は、生涯を通して一定ではありません。

一般的には、

思春期

片頭痛が増える

20〜40歳代

片頭痛が最も多い時期

更年期前後

ホルモン変動によって一時的に悪化することがある

閉経後

徐々に改善する方が多い

という経過をとります。

特に、もともと月経関連片頭痛がある女性では、更年期に片頭痛が悪化しやすいとされています。

 

更年期に起こりやすい片頭痛の特徴

更年期では、

  • 頭痛回数が増える
  • 頭痛が長引く
  • 市販薬が効きにくくなる
  • 月経周期が不規則になり発作の予測が難しくなる
  • 睡眠不足によって悪化する
  • ホットフラッシュと頭痛が重なる

といった変化がみられることがあります。

「若い頃から頭痛持ちだったけれど、40代後半から急に悪化した」という方も珍しくありません。

 

更年期では緊張型頭痛も増える

更年期の頭痛がすべて片頭痛とは限りません。

更年期には、

  • 不眠
  • ストレス
  • 肩こり
  • 首こり
  • 自律神経の乱れ

なども起こりやすいため、緊張型頭痛が増えることもあります。

さらに、片頭痛+緊張型頭痛が混在している患者さんも多くみられます。

そのため、頭痛の種類を正確に診断することが重要です。

 

閉経すると片頭痛は改善する?

多くの女性では、自然閉経後に片頭痛が改善する傾向があります。

閉経後はエストロゲンの大きな変動が少なくなり、ホルモンが比較的安定するためです。

ただし、

  • 片頭痛が完全になくなる
  • 必ず改善する

というわけではありません。

閉経後も片頭痛が続く方もいます。

また、自然閉経と手術による閉経では経過が異なることがあり、卵巣摘出などによってホルモンが急激に低下すると、一時的に片頭痛が悪化する場合があります。

 

更年期障害の治療と片頭痛

更年期症状が強い場合には、婦人科でホルモン補充療法(HRT)が検討されることがあります。

HRTによって、

  • ホットフラッシュ
  • 発汗
  • 不眠
  • 更年期症状

が改善することがあります。

一方、片頭痛への影響には個人差があります。

ホルモン変動が安定することで改善する方がいる一方、投与方法によっては頭痛が悪化することもあります。

そのため、片頭痛がある方では、婦人科と頭痛外来が連携しながら治療を考えることが重要です。

 

前兆のある片頭痛では特に注意

片頭痛には、前兆のない片頭痛と前兆のある片頭痛があります。

前兆では、

  • 閃輝暗点
  • ギザギザした光
  • 視野欠損
  • 手足のしびれ
  • 言葉が出にくい

などが頭痛の前に現れます。

前兆のある片頭痛は、もともと虚血性脳卒中リスクがわずかに高いことが知られています。

特に、

  • 喫煙
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • エストロゲン製剤の使用

などが重なる場合には、より慎重な評価が必要です。

 

更年期の片頭痛の治療

治療は通常の片頭痛と同様に、急性期治療と予防治療に分けて考えます。

急性期治療

  • NSAIDs
  • アセトアミノフェン
  • トリプタン
  • ラスミジタン
  • ゲパント

などを症状や体質に応じて使用します。

重要なのは、我慢しすぎず適切なタイミングで治療することです。

頭痛薬の使いすぎには注意

更年期に頭痛回数が増えると、市販の鎮痛薬を頻繁に飲むようになる方がいます。

しかし鎮痛薬の使用回数が増えすぎると、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)を起こすことがあります。

「薬を飲む回数が増えてきた」という場合は、急性期治療だけでなく予防治療を検討するタイミングです。

予防治療

頭痛が頻回で生活に支障がある場合には予防治療を検討します。

現在は従来の予防薬に加えて、CGRPを標的とした治療があります。

経口薬

  • アクイプタ
  • ナルティーク

注射薬

  • エムガルティ
  • アジョビ
  • アイモビーグ

などです。

患者さんの頭痛日数、年齢、併存疾患、生活スタイルなどを考慮して治療を選択します。

 

40〜50歳代になると、片頭痛以外の疾患も考える必要があります。

例えば、

  • 脳腫瘍
  • 脳動脈瘤
  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • 脳静脈洞血栓症
  • RCVS
  • 慢性硬膜下血腫

などです。

特に、これまで頭痛がなかった方に新しく頭痛が出現した場合は、一度脳神経外科や頭痛外来で評価することをおすすめします。

MRI検査を検討したい頭痛

次のような場合にはMRI検査を検討します。

  • 今まで経験したことのない頭痛
  • 突然の激しい頭痛
  • 徐々に悪化する頭痛
  • 50歳前後で初めて出現した頭痛
  • 手足のしびれ・麻痺を伴う
  • ろれつが回らない
  • 意識がおかしい
  • 視覚症状がいつもと違う
  • 発熱を伴う

当院では必要に応じてMRI・MRA検査を行い、危険な二次性頭痛がないか確認します。

 

Q&A

Q1. 更年期になると片頭痛は増えますか?

増えることがあります。

特に閉経前はエストロゲンの変動が大きくなるため、片頭痛の頻度や強さが増すことがあります。

Q2. 閉経したら片頭痛は治りますか?

自然閉経後には改善する方が多いですが、すべての患者さんでなくなるわけではありません。

Q3. 更年期障害と片頭痛は見分けられますか?

頭痛の性状、持続時間、吐き気、光過敏、月経との関係などを確認することで診断します。必要に応じてMRI検査も行います。

Q4. ホルモン補充療法で片頭痛は改善しますか?

改善する場合も悪化する場合もあります。片頭痛のタイプや投与方法によって異なるため、婦人科と相談しながら治療することが重要です。

Q5. 40代から初めて頭痛が出ました。更年期でしょうか?

更年期による頭痛の可能性はありますが、初めて出現した頭痛は他の脳疾患を除外することが大切です。脳神経外科や頭痛外来への受診をおすすめします。

まとめ|更年期の頭痛は「ホルモン変化」と「片頭痛」の両方を考える

更年期ではエストロゲンが大きく変動するため、もともと片頭痛がある女性では一時的に頭痛が悪化することがあります。

特に、

  • 月経関連片頭痛がある
  • 40代になって発作が増えた
  • 市販薬を飲む回数が増えた
  • 頭痛が仕事や家事に影響している

という場合には、適切な片頭痛治療を検討する価値があります。

一方で、更年期に新しく出現した頭痛をすべて女性ホルモンのせいにするのは危険です。

「今までと違う頭痛」「突然の強い頭痛」「神経症状を伴う頭痛」では、MRIなどによる評価が重要になります。

大阪市・東大阪市・八尾市で更年期の頭痛や片頭痛にお悩みの方は、当院の頭痛外来へご相談ください。

参考文献

  1. 日本頭痛学会.頭痛の診療ガイドライン2021
  2. 日本女性医学学会.更年期医療ガイドブック
  3. International Headache Society. International Classification of Headache Disorders, 3rd edition(ICHD-3)
  4. MacGregor EA. Migraine, menopause and hormone replacement therapy. Post Reprod Health.
  5. Pavlović JM, et al. The impact of midlife on migraine in women. Curr Pain Headache Rep.
  6. Nappi RE, et al. Migraine and menopause: a narrative review. Menopause.
  7. Sacco S, et al. Migraine and risk of ischaemic stroke. J Headache Pain.
  8. Goadsby PJ, et al. Migraine. Nat Rev Dis Primers.

 

執筆 三木 貴徳(みき たかのり)

東大阪みき脳神経外科クリニック 院長

資格

  • 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
  • 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
  • 日本脳神経血管内治療学会 神経血管内治療専門医

所属学会

  • 日本頭痛学会
  • 日本認知症学会

大阪市・東大阪市・八尾市を中心に、頭痛外来、片頭痛治療、MRI検査、脳卒中診療、認知症外来、脳ドックに力を入れています。

更年期の頭痛は、女性ホルモンの変化だけでなく、片頭痛そのものの治療を見直すことで改善できる場合があります。「年齢のせい」と我慢せず、お気軽にご相談ください。