「発作時の治療」+「予防」
どちらにも使える経口CGRP受容体拮抗薬です。
ナルティーク(ナルティークOD錠75mg:一般名リメゲパント)は、「発作時の治療」+「予防」どちらにも使える、日本で初めてとなる、片頭痛の急性期治療および発症抑制の両方を適応とする経口CGRP受容体拮抗薬(ゲパント)です。
薬理作用(どんな働きをする薬?)
CGRPとは
- 片頭痛では三叉神経からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という神経ペプチドが放出され、脳周囲の血管拡張、神経の炎症・過敏化され、痛みや吐き気、光・音過敏を引き起こすと考えられています。
ナルティークの作用機序
- ナルティークはCGRP受容体に選択的に結合してブロックする低分子薬(ゲパント)です。
- その結果、以下がが行われます。
- CGRPによる血管拡張・炎症シグナルを遮断
- 急性期では「起きてしまった発作の痛み・随伴症状」を軽減
- 予防では「発作そのものが起こりにくくなる」と考えられています。
トリプタンとの違い
- トリプタン:5-HT1B/1D受容体を刺激→血管を収縮 させて効くため、心疾患・脳血管障害・重度高血圧などでは使いにくい。
- ナルティーク:血管収縮作用はほとんどなく、CGRP受容体をブロックして効果を出します。心血管系への影響は非臨床試験で少ないことが示唆されています。
効果(エビデンス)
ナルティークの有効成分リメゲパントは、海外では Nurtec ODT として急性期治療+発作予防の両方で有効性が確認されています。
急性期治療として
- 片頭痛発作時に 1錠(75mg)内服
- 代表的な試験では(Nurtec ODT 75mg):
- 2時間後の痛み軽減:約59%(プラセボ 43%)
- 2時間後の完全な痛み消失:約21%(プラセボ 11%)
- 48時間まで効果が続く例も報告
- 日本の解説サイトや頭痛専門クリニックのまとめでも、「服用2時間後に約6割で痛み軽減、約2割で痛み消失」と紹介されています。
予防薬として
- 隔日(2日に1回)服用することで、
- 月間片頭痛日数が約4.3日減少(プラセボ 3.5日減)などのデータが示されています。
- 日本の頭痛外来向け解説でも「月に8回あった頭痛が半分程度になるイメージ」と説明されています。
副作用・注意点
主な副作用(海外・国内データより)
- 比較的多いもの
- 悪心(吐き気)
- 便秘、下痢、腹部不快感などの消化器症状
- 倦怠感、疲労感
- その他、国内添付文書に挙げられている副作用(頻度は多くはないが注意が必要なもの)
- めまい、眠気、頭痛・片頭痛(上乗せまたは変化)
- 感染症(上気道感染など)
- 肝機能異常(AST/ALT上昇)、脂肪肝
- 高血圧、動悸
- 発疹、蕁麻疹、かゆみ など
重い副作用として注意すべきもの
- 遅れて出る重篤なアレルギー・過敏症
- 呼吸困難、全身の発疹・蕁麻疹 などがあれば、すぐ受診・投与中止が必要。
使用できない/注意が必要な人
- 禁忌(使わない)
- 本剤成分に対して過敏症の既往がある人
- 投与を避けるか慎重に判断する人:
- 重度腎機能障害・末期腎不全、重度肝機能障害では投与を避けることが望ましい。
- 中等度の腎・肝機能障害でも血中濃度上昇に注意。
- 妊婦・授乳婦、小児(18歳未満)の有効性・安全性データは限られており、
- 専門医がリスクとベネフィットを慎重に評価して使用を検討します。
相互作用(飲み合わせ)
- ナルティークは CYP3A4・CYP2C9 で代謝され、P-gp の基質です。
- 強いCYP3A4阻害薬(クラリスロマイシン、イトラコナゾール、リトナビル など)
- 強い/中等度のCYP3A4誘導薬(リファンピシン、フェノバルビタール、セントジョーンズワート製品 など)
- P-gp阻害薬(シクロスポリン、ベラパミルなど)とは血中濃度の変化により 副作用増加/効果減弱の可能性 があるため、併用回避・慎重投与が推奨されています。
投与方法(飲み方の概要)
実際の処方・用量は必ず主治医の指示に従ってください。ここでは添付文書・公式サイトに基づく一般的な内容です。
剤形
- OD錠(口腔内崩壊錠)75mg
- 舌の上や舌下で唾液で溶かして服用するタイプで、通常は水なしで飲めるよう設計されています。
服用時の注意点
- ブリスターシートからは、裏のシートをはがしてから錠剤を取り出す(押し出すと割れやすく誤飲のリスク)
- 吸湿性があるため、服用直前に乾いた手で取り出す。
- 水で飲んだデータは十分でないため、原則として 水なしで舌上/舌下で溶かして服用することが推奨。
まとめ
- ナルティークは CGRP受容体をブロックする「ゲパント系」経口薬 で、発作時の急性期治療、発作頻度を減らす予防療法の両方に使えることが最大の特徴です。
- トリプタンと異なり血管収縮作用がほぼないため、心血管リスクを抱える患者さんにも選択肢が広がる可能性があります。
- 一方で、アレルギー反応、肝機能異常や消化器症状、薬物相互作用(CYP3A4・P-gp関連)などには注意が必要で、頭痛・片頭痛に精通した医師のもとでの使用が前提 とされています。
参考URL(医師向け情報を含みます)
※ご本人やご家族の治療薬としてナルティークを検討している場合は、既往歴・他の薬・生活状況によって適否が大きく変わるので、必ず主治医・頭痛専門医に直接相談してください。
リメゲパンOD錠(口腔内崩壊錠)の有効性、安全性を示す海外スタディの結果
研究の目的
- CGRP受容体拮抗薬リメゲパンは、通常錠で急性片頭痛に有効であることが示されていました。
- 本試験では、**75 mg口腔内崩壊錠(ODT)**が
- 片頭痛発作の痛み
- 患者が一番つらいと感じる随伴症状(悪心・光過敏・音過敏のいずれか)を2時間後にどれだけ改善するかを、プラセボと比較することが目的です。
試験デザイン
- デザイン
- 多施設・無作為化・二重盲検・プラセボ対照・第3相試験
- 実施国
- アメリカ、69施設
- 対象
- 18歳以上
- 1年以上の片頭痛(前兆の有無を問わない)
- 月2〜8回の中等度〜重度の片頭痛発作
- 月15日未満の頭痛(日)
- 除外
- 安全性評価の妨げになる基礎疾患
- 最近1年以内の薬物・アルコール乱用
- 明らかな検査異常など
- 割り付け:
- リメゲパンODT 75 mg
- プラセボ
- 1:1で無作為化(予防薬使用の有無で層別)
- 投与方法:
- 患者が中等度または重度の片頭痛発作が出た時点で、単回投与
- 舌下投与(ODT)
- 服用後2時間までは救済薬禁止(2時間以後はNSAIDs、アセトアミノフェン等は可)
評価項目
- 主要評価項目(2時間後)
- 完全な痛み消失(pain freedom)
- 最もつらい随伴症状(MBS)の消失:患者が「悪心」「光過敏」「音過敏」の中から一番つらいものを事前に選択し、それが0になるか。
- 主な副次評価項目
- 2時間後の痛み軽減(中等度/重度 → 軽度/なし)、光過敏・音過敏・悪心の消失、通常どおり活動できるか(機能障害スコア)
- 早期効果:60分・90分での痛み軽減・痛み消失・通常活動
- 持続効果:2〜24時間・2〜48時間での痛み消失の持続、MBS消失の持続、痛み軽減の持続、通常活動の持続
- 24時間以内の救済薬使用率
- 2〜48時間の痛み再発(2時間で痛みゼロになったが後で再発した割合)
対象患者の背景
- 解析対象:1,351例(リメゲパン669例、プラセボ682例)
- 平均年齢:40.2歳
- 女性:85%
- 白人:75%(黒人20%など)
- 片頭痛タイプ:前兆なし:70%、前兆あり:30%
- 月の中等度〜重度発作:平均4.6回
- 未治療発作の持続:平均約30時間
- 歴史的に一番つらい症状:光過敏:57%、悪心:23%、音過敏:19%
主要結果(2時間後)
- 主要評価項目:
- 2時間後、痛みゼロになる患者の割合、最もつらい症状が消える患者の割合ともに、リメゲパンが有意に優れていました。
- 評価項目
- リメゲパン プラセボ 差(リメゲパン−プラセボ)
- 痛み完全消失
- 21% 11% +10%(p<0.0001)
- MBS消失
- 35% 27% +8%(p=0.0009)
副次評価項目の結果(概要)
- ほとんどの副次評価項目でリメゲパンはプラセボより有意に優れていました(階層的検定)。
- 早期効果
- 60分後:痛み軽減:リメゲパン群で有意に高い、通常どおり活動できる割合も有意に高い
- 90分後:痛み完全消失、MBS消失、痛み軽減、通常活動いずれもリメゲパン>プラセボ
- 持続効果
- 2〜24時間、2〜48時間の間で痛み消失の持続、MBS消失の持続、痛み軽減の持続、通常活動の持続、24時間以内の救済薬使用率など、ほぼ全ての項目でリメゲパン群が有意に優れていました。
- 2〜48時間の痛み再発率
- 有意差が出なかったため、階層的検定のルール上、それ以降の統計的解釈は限定的とされています。
安全性・忍容性
- 安全性解析対象
- リメゲパン 682例
- プラセボ 693例
- 有害事象の発現率
- リメゲパン:13%
- プラセボ:11%
- 頻度1%以上の有害事象
- 悪心:リメゲパン 2% vs プラセボ<1%
- 尿路感染:1% vs 1%
- めまい:1% vs 1%
- 重篤な有害事象(SAE)
- 両群とも報告なし
- 肝機能
- 各群で1例ずつAST/ALT >3×ULNがあったが、いずれも治験薬との関連なし。
- ビリルビン >2×ULNは両群ともなし。
- 全体として、プラセボと同程度の忍容性で、明らかな安全性シグナルは認められていません。
著者らの解釈・臨床的意義
- 75mgリメゲパンOD錠単回投与は、急性片頭痛においてプラセボより有効であり、
- 2時間後の痛み・MBS消失
- 60分からの早期効果
- 最大48時間まで続く持続効果が示されました。
- 安全性はプラセボと同程度で、重篤な有害事象や肝毒性のシグナルはなし。
- ODT製剤は
- 水なしで服用できる
- 吸収が速い(既存の錠剤よりTmaxが短い)という特徴があり、悪心・嘔吐を伴いやすい片頭痛患者にとって利便性が高い可能性があります。
- トリプタン無効例や心血管リスクのためにトリプタンが使えない患者など、アンメットニーズの高いサブグループでの有用性が今後の課題とされています。
- 一方で、この試験は1回の発作のみを評価しており、「発作ごとの再現性」「長期安全性」については、別の長期試験が必要とされています。
まとめ
- リメゲパン75mgの口腔内崩壊錠は、単回投与で急性片頭痛の痛みと随伴症状を2時間以内に有意に改善し、その効果は48時間程度続き得る。安全性はプラセボとほぼ同等で、大きな安全性の問題は認められなかった。
